少しして、とあるクーデター事件が起こった。
私が指揮を取り、その事件の収拾をつけることとなり、いつもの如く、ハボックの小隊を先陣として送り込んだ。
「大佐~…ハボック少尉戻りましたぁ~…。」
結局、ハボックの小隊だけでなんとかクーデターを鎮圧出来た。
しかし代わりの対価は…私ではなくハボックに降りかかった。
「うおっ!!ハボお前大丈夫か?!!」
「出血がまだ止まらないところがあるわね…医務室いっていらっしゃい、ハボック少尉。」
「えっ…?!」
ハボックは、傷だらけで帰ってきた。
すぐにハボックの小隊の一人が駆け込んできて、ハボックが部下を庇いながら瓦礫の中を退散していたらしく、見た目は酷くなくても、かなりの外傷があるらしいことを伝えてきた。
「あぁー…こんくらいはすぐ治るから、医務室はいかな…「馬鹿者っ!!すぐに行ってこい!!今すぐ行かないなら消し炭にするぞ!!」…うぇっ??!は、はぁ…アイサー大佐…。」
私が判断ミスをした。
ハボックに指示を出していたのは私だった。
『ハボック、援軍はまだ行けそうにないみたいなのだが、これ以上の時間は延ばせない。お前の小隊だけで行けるか??』
『う~ん…多分。』
『では私もで…「いや、大丈夫!!終わったら何か奢ってくださいよ~大佐っ♪」…ふっ、わかった。2分後に手筈通りに存分に暴れてこい。』
…完全にあいつを信じ過ぎた。
私はいつだって最終的には自分の判断を優先していた。
…誰も傷つけないため……そのためなら私は存分に傷つこう…そう思っていたのに、何故かあのときはあいつを信じてしまった。冷静に考えれば確実に無理だとわかるはずだったのに。
そう私が考えている間でも、ハボック(あの駄犬)は医務室に動こうとしなかったので、私が直々に連れていくことにした。
「失礼する…んん??なっ、休憩時間か…仕方がない。私が手当てしてやる、ハボック。とりあえず服を脱げ。」
医務室に行くと、当直が休憩に入っていたためもぬけの殻だったので、私が手当てすることにした。
「いや、ほんとに大丈夫だから…。大佐が心配する必要はないっすよ。」
「お前はまだそんなことを言うか。手当てを受けないなら褒美はやらんぞ、この駄犬。」
「…ご褒美…今もらっても良い??治療はちゃんと受けるから。」
「…酒を今すぐ持ってこいと言うのか?!お前、今勤務ちゅ…っ……??!!!!」
気がついたら私は、ハボックにまたキスをされていた。
「んんっ……!!」
ハボックのキスは本当にヒューズのとよく似ている。似ているからこそ、頭がすぐに霞んでいってしまう。
しかし、この駄犬は私の部下。それに男。そんなことをいつまでも許していては、上司の威厳が廃る。私は力いっぱいにハボックを突き飛ばした。
「お前…上司に何をする!!!!」
全面的に怒りをあらわにして言い放ったが、ハボックは涼しげな顔をしてこう言った。
「あーぁ…残念。せっかく対価もらうために怪我いっぱいして、2人きりになるように医務室無理矢理空けといたのになー。でもさ、大佐。あんたこういうこと、ヒューズ准将ともやってたじゃないですか。…それ黙っておいてあげているんだから、その対価としてこういう戒めもアリでしょ??…ロイ・マスタングた い さ。」
涼しげな顔でハボックが暴露した内容は衝撃的だった。信頼していた部下が、こんなにも下種な輩だとは思っていなかった。私は何も考えずに発火布を装備した。
あとは指を鳴らすだけ…となったとき、ふと我に返った。
…私は……今、何をしょうとした……??
「殺したいなら殺せば??…でもアンタに人を殺せる勇気がまだあるんすか??『イシュバールの英雄』さん??」
その言葉で、冷静になった私は、ハボックの言う通りに動くことをやめるため、発火布を元あったポケットの中へと戻した。
「…勘違いするなよ、ハボック少尉。…近々実行する計画のために、お前を生かしといてやる。だがな、計画が無事成功したあと、お前がまだ態度を直さないようなら、容赦なく切り捨てる。わかったか…?!!」
怒りをあらわにし、しかもいつ殺されるかわからないといった宣言をしたにも関わらず、ハボックは整然としていた。
「…アイサー大佐殿―っ。そいじゃ、対価は一応貰ったし……報告書、書いてきまーす。」
このとき私はまだ、本当のハボックの気持ちに気づいてはいなかったのだった…。
to be continued...
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