俺がここに来てから1ヶ月、八戒が来てから半月が経った。
今日もいつものように、三蔵と悟浄が店に働きに行って、入れ違いで大学院から八戒が帰ってくる。
「お帰り、八戒!!」
「ただいまです。…おや、今日はおでんですね。夕飯作ってくれて有難うございます、悟空。」
「うん、今日寒かったから。」
八戒に褒めてもらうと、何だかホッコリする。
「昔の俺も…そうだったのかな。」
「何がですか??」
「あ~いや、ご先祖様も、八戒に褒められたらホッコリしてたのかなって。」
「ふふふ…悟空に喜んで貰えるならいくらでも褒めますよ。」
「ありがとっ。」
俺はこうやって八戒とのんびりした時間を過ごすのが好きだ。
あ、そりゃ三蔵と二人っきりが一番好きだけどな。
「冷めちゃうからおでん食っちまおう!!」
「そうですね。いただきます。」
このとき俺は、まだ八戒の悩みに気づいていなかったんだ。
******
夕飯後のお茶を嗜みながら、僕は前々から気になっていたことを悟空に聞いてみることにした。
「悟空。悟空には…過去の記憶は…残っているんですか??」
すると、悟空は困ったような顔をしながら、首を横に振った。
「全然。…八戒もないんだよな。」
「はい。」
…このことを聞くのはまだ少し早かっただろうか。
…先程の会話からもわかるように、僕らには前世、はたまたご先祖の方々の記憶がない。
反対に、三蔵と悟浄にはある。それも全ての記憶が。
…多分僕が推測するに、何か良からぬことがあってそうなったのだろう。
「俺、さ。三蔵と同じ記憶を持ちたくて、取り戻す方法がないか聞いたんだ。」
「あったんですか??」
「…うん、あるらしいんだ。でもそれには三蔵と悟浄の力が必要なんだって。…んで、俺すぐやってくれって頼んだんだけど……やってくれなかったんだ。」
何故だ。
何故僕達が記憶を共有するのを拒むのだろうか。
僕も悟浄と同じだけ記憶を持っていたい。
…もし辛い記憶があったら。
一人だけ苦しむのは辛過ぎることを僕は知っているから。
「…俺、三蔵を問い詰めたんだ。そしたら、『今は』無理だって言われた。タイミングがあるのかな??」
…『今は』とはどういう意味なのだろうか。
悟空が言うことも一理あると思う。
だったらそのタイミングはいつなのだろうか。
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