Side:R
久々に休みが取れた俺は、自室を片付けていた。
途中、懐かしい本を見つけて読んでしまったりしたが、順調に片付けは進んだ。
最後の片付けブロックなクローゼットの奥の方へとたどり着いた俺が見つけたのは
「ん…??これ、高校んときのブレザーか??」
高校のときのブレザーだった。
…入学式の日、朝比奈の気を引くために、制服のネクタイ締めろって頼もうとして失敗したんだったっけ…。
そんなことを思いながら、ブレザーに袖を通してみた。
「お、案外着れるもんだな…。」
そういえば朝比奈は学ランだったな…とふと思い出した。
そして同時に面白いことも思い付いた。
Side:A
久々の休日で、一人自宅で本を読んでいたところに、龍一郎様から電話がかかってきた。
「はい、朝比奈です。」
『おう、朝比奈。お前、高校時代の学ラン、家に残ってる??』
なぜいきなり学ランの話があがったのか、疑問に思いつつも、質問に答える。
「この間、学生時代の友人に貸したばかりなので、自宅に置いてありますが…いきなりどうしたのですか。」
『それ用意して待ってろ。…今からお前ん家行くからっ!!』
ブチッ…プーっ、プーっ…
あの馬鹿代表取締役は制服なぞ取り出して、何を考えているのやら…と少し呆れつつも、言われた通り、私は貸し出した学ランを探すことにした。
Side:R
しめたっ!!朝比奈のやつもまだ学ランを持っていた!!しかも手元にあるときた!!
俺は直ぐさま高校時代の格好をしっかり再現して、朝比奈の家へと向かった。
…15年くらい前の格好だが、差ほどサイズも変わらず、まだ若いな~イケるじゃん、俺♪とノリノリに。
この格好で会ったときの朝比奈のリアクションが楽しみで仕方がなく、足取りも軽い。
そんなわけでいつもより早く朝比奈の自宅へ辿り着いた。
「朝比奈~俺~っ!!あーけーろー♪」
そしてドアを開けてもらった俺が目にしたのは……
「高校生・朝比奈薫」だった。
Side:A
学ランを見つけ、龍一郎様が来るまでに、彼が何を考えているのかを思い巡らしてみた。
イベント好きな人だが、コスプレに深く興味を持ってる人ではない…。
そしてふと、今日は自室の片付けをすると龍一郎様がおっしゃっていたのを思い出す。
…そこから推察すると、多分彼は「高校生・井坂龍一郎」で私の家を突撃訪問して来るに違いない。
…そうとわかれば、たまにはこちらからも仕掛けて見ようと思った私は、学ランとワイシャツを手にして、着替えることにした。
学ランは流石に少し小さかったが、前を閉じなければ着られた。
そのときちょうど龍一郎様の訪問の音が鳴り、ドアを開けたら--------やはりそこには「高校生・井坂龍一郎」がいたのだった。
「あ、朝比奈っ?!!」
確かに高校時代の龍一郎様の格好だったが、当時にはない色気----胸元を少し開いたワイシャツから覗く首筋など-----を感じられた。
「まさかとは思いましたが…やはりその格好でいらっしゃいましたか…龍一郎様…。」
Side:R
まさか朝比奈も「高校生」の格好で待っていたとは…流石は俺の秘書。俺のことよくわかってるじゃん…じゃなくて!!
「せっかく脅かそうと思ったのに…クソっ。朝比奈の癖に生意気な…。」
「龍一郎様こそ、よくその格好で外を歩けましたね…。」
よくよく朝比奈を見ると、学ランは小さくなってしまったのか、前は開いたまま。シャツも慌てて着たのか、いつもは上まできっちりボタンを締めているはずなのに締めていない。
そして極めつけ。
「お前…第二ボタン…。」
「あぁ…卒業式のとき、部活の後輩の女子にあげました。……龍一郎様、もしかして…「ダァーッ!!皆まで言うなっ!!」」
そうだよ!!
あいつの第二ボタン貰ったやつに嫉妬してんだよ!!
悪いかよ!!
…と心の中で叫ぶ俺。
でもコイツはそんなこともお見通し。
「ご安心ください、龍一郎様。第二ボタンをあげてしまった責任は、今ここで取らせていただきます。」
「…っ//おぅ。責任取ってみやがれ。」
そんなこんなで、俺は多分制服を見つけてすぐに思った、「学生時代にやりたかった朝比奈とのヒトトキを満喫したい」という願望をいともたやすく朝比奈…俺の大事な恋人によって、叶えられたのだった。
[14回]
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