ハボックの隊員から聞いたハボックの真実の真相を、本人から聞かぬまま、作戦実行日となった。
「…以上だ。…さて、ここからは長丁場だ。気を緩めずに実行に移してくれ。」
「「「「「Yes, sir!!!」」」」」
皆各々の持ち場へ散って行ったので、執務室に残ったのは私一人となった。
久しぶりの一人の部屋だったので、くつろぎ方を忘れてしまったのか、落ち着かない。
『たいさっ!!お疲れっす!!コーヒーでも飲みます??』
「あぁ、よろしく頼む、ハボッ……。」
私の耳はとうとう幻聴を聞くようになったのか…。
ふと椅子に座ったとき、今一番話をしたい人物の声が聞こえたように思った。
いつもの癖で、それに反応し、コーヒーを頼もうとしていた自分にとても驚いたが、すぐに笑みを消した。
…よくよく思い起こせば、ハボックはふとしたときに傍にいた。
私が休憩(少なくとも私はサボっている意識はない)しているときも、一番に見つけ出すのがハボックだった。
一度、ハボックにどうやって見つけ出すのか尋ねたときがある。
そのとき、ハボックは少し照れ笑いをしながらこう答えていた。
『う~ん…なんかいつの間にか、大佐のことを目で追っているときがあるんですよね~。…あんたの犬だからかな??だから、サボり先への移動中をよく見かけるんすよ。』
そのときは、私の護衛という名目にしては、よく見ていると思った。
****
あれから
無事ロス少尉を救出することに成功したが、バリーが暴走してどこかへ消えてしまったため、それを探すべく、私とハボック、中尉とアルフォンスの二手に分かれて、第三研究所内を行動することとなった。
そして私たちの前にあらわれたのは……ホムンクルス・色欲(ラスト)。
ハボックは、どうやら彼女と接触していたらしく、かなりの動揺をしていたが、やつを倒すべく、焔を封じられながらも死闘を繰り広げた。
なんとか倒したかに思えたのだが、ホムンクルスの不死身は伊達ではなかった。
不意をつかれ、ハボックは背中をめった刺しにされ、私も発火布を破かれ、ひん死手前までにされ、ホムンクルスには逃げられた。
「くそ……くそぉ!!」
悔しかった。国の敵である、ましてや、あのヒューズを殺した相手かもしれないやつを目の前にして、倒せなかった。
むしろ返り討ちにされた。
そして私はまた一人、失おうとしていた。
「ハボック……!!」
私はまだお前から本当のことを聞いていない。
…何も言わずにお前は死ぬつもりか??私に恨まれていると思ったまま死ぬつもりか??
「そうは…させない……!!」
ふと光ったガラスの破片が目に入り、ふとハボックのライターを思い出し、ガラスで手の甲に錬成陣を書き、ライターを利用して焔を錬成した。
「死ぬなよ、ハボック!!!」
傷を焔で焼き、なんとか止血出来た頃、ハボックの意識が少し戻ってきたのか、唸り声をあげていた。
「ハボック!!」
私の声に反応し、ハボックはうっすら目を開けた。
「どうして…キズ、塞いだの??あん、た、俺を殺そうとしていたのに……。」
「お前、なぜあのとき私に嘘をついた??あの怪我は…本当は私のせいなのだろう??」
ハボックは私の言葉に驚いたのか、少し目を大きく見開いた。
今は嘘をついている余裕もないはずだ。このまま真相を聞いてしまうことにした。
「私のことを庇っても、お前は出世とか望むようなタイプではないし、何のメリットもないはずだ。なのに、リスクを侵してまで、私の侮辱を許せなくてあんな行動をとるなど……お前らしくない。」
「はぁ……バレちゃったか…。流石に今は嘘ついてる余裕ないしな……。最期まで言うつもりはなかったんだけどな……。」
「火、借りていいっすか」と、ハボックはポケットに入っていた煙草を咥えながら私に尋ねてきた。ライターを差し出して、火をつけてやると、ハボックは観念したように真相を話してきた。
「俺はね、大佐。あんたの下についた時からずっと、あんたにホレてた。…色恋の方の「好き」っていう感情を持っていた。……だけどあんたが大切にしていたのは、ヒューズ准将だった。…あの人には流石に俺は敵わない……そう思った。けど、俺はあの人に…敵わないと思っていた、あのヒューズ准将にアンタを託されたんだ。」
「ヒュ、ヒューズに…??」
そしてハボックは、真相を静かに語りだした。
[2回]
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