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『ワンコロ』
『ヒューズ中佐ぁ、お久しぶりっす。…つか、ワンコロやめてくださいよ。』
『折り入ってお前にお願いがあるんだ、ハボック少尉。…ちょっと良いか。』
ヒューズ中佐はいつものような飄々とした雰囲気ではなかった。
俺は頷き、空いている会議室へとヒューズ中佐を連れて行った。
『…俺は近いうちにロイの傍にいられなくなると思うんだ。……勘、ってやつ??』
『どうしてです??人事異動でも??』
『まぁ、最後まで話を聞け。とにかくな、ワンコロ。もし俺がロイの傍に居られなくなったときは…お前がロイの傍に…いや、隣にいてやって欲しいんだ。…俺は結局あいつの隣には立ってやれなかったが…お前になら立てるって信じている。だから頼む。あいつを…もしお前がロイ・マスタングを一人の人間として好きなら、あいつの隣に立って、あいつを…独りにしないでやってくれ。万が一の時は…俺の代わりにあいつを幸せに導いてやってくれ。』
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「俺はヒューズ准将に了承の返事を返しました。俺はあんたが好きだったし、あんたを護れるなら何だって出来たから。」
「でも大佐は多分ずっと、中佐が好きで大切だから、あの人の隣には立てないと思ったんです。ならいっそ、大佐に嫌われていた方がマシだろう。そう思って、俺は、ヒューズ准将の死後、あんたに嫌われる機会を探していたんです。」
「ハボック……。」
「へへ…。でもっ、もうヒューズ中佐との約束も…守れないかもな……。ほら、大佐。俺のことはいいから、早くソラリスを追ってください。…早くあいつを倒してきてください…よっ…!!」
そういって、ハボックは私を突き出した。
ハボックの衝撃的告白には驚いた。まさか、ハボックは私のことが好きで、ヒューズがそんなことをハボックに言っていたなんて思いもしなかった。
とにかくまずはラスト殲滅…と、私は頭に言い聞かせ、ラストの行先を追った。
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ラストを倒すことには成功した。
しかし、また私は失ってしまった。
私を想っていてくれていた者、そして信頼する部下たち。
…私は一人になった。
あの時のハボックの告白は、今も頭から離れなかった。
『俺はね、大佐。あんたの下についた時からずっと、あんたにホレてた。…色恋の方の「好き」っていう感情を持っていた。……だけどあんたが大切にしていたのは、ヒューズ准将だった。…あの人には流石に俺は敵わない……そう思った。けど、俺はあの人に…敵わないと思っていた、あのヒューズ准将にアンタを託されたんだ。』
ヒューズが認め、私を託した男-----ジャン・ハボック
思い起こせば無意識にハボックを近くにおいていた気がした
あの無邪気な笑顔に幾度となく救われたと思う
そう、あのとき…ラストを追うよう言ってきたときも、笑顔だった
でも私は彼に何をしてやれた??
…ヒューズには何もしてやることは出来なかった。
……ハボックの想いにもずっと気づいてやれなかった
気づかずにあんなひどいこと…殺そうとまでしてしまった
2人の願いは「私の幸せ」だという。
だが私は彼らの願いを叶えてやれない。
私は 何も出来ない ちっぽけな人間だ----------------
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