ねぇトリ。
もし俺がお前の前から消えても、普通の生活、しろよ。
変なことはするなよ。
『…でもな、出来れば…出来ればで良いから…
俺のこと、忘れないで-------------』
『fly to arms for you』
***************
俺の名前は羽鳥芳雪。
丸川書店エメラルド編集部------通称「エメ編」で、副編集長をしている。
担当作家は何人かもっているが、中でも俺が一番大切にしている作家の名前は、『吉川千春』。
本名………『吉野千秋』。
俺の大切な---------恋人だ。
今日もなんとか原稿を落とさず入稿が無事完了した。
校了後、俺は決まって吉野の家へ行く。
入稿前の追い込み時、吉野は自炊が全く出来ないので、まともな食事をとらない。
だから、校了明けには決まって俺が食事を作りに行く。
…まぁ、本音はただ吉野に会いたいだけなのだ。
いつものように、合い鍵を使って吉野の家へ入ると、部屋中が真っ暗で少し驚いた。
「吉野??寝ているのか??」
珍しくベッドで寝ているのか…と、まっすぐ吉野の寝室へ向かった。
しかし、そこに吉野はいなかった。
コンビニでも行ったのかもしれない…と思い、料理をしようと、台所へ向かうと、そこには吉野の字で書かれた封筒がが置いてあった。
宛名書きは…俺だ。
律儀に出かけるときに手紙でも書いたのか…??と不思議に思いながら封筒を開け、手紙を読んでみた。
そこで読んだ内容は……俺の体も心もズタズタにするような、衝撃的な内容だったのだ。
『トリ……否、…大好きな羽鳥芳雪 さま
突然こんな手紙があって、トリ、驚いてるよな。
俺だってトリに手紙を書くのは…多分初めてだからまじ緊張してる。
でも落ち着いてこの先の文章を読んでほしい。
…多分この文章をトリが読んでいるとき、俺はいないだろうから。
トリ、俺はもうお前の傍にいることが出来ない。
…嫌いになったからとか、そういうんじゃないんだ。その、と、トリのことは大好きだよ。今も、これからも、な。
…でも、どうしても大事な事情があって、お前の傍にいられなくなっちゃったんだ。
…それは、トリのせいじゃなくて、俺のせいで…なんだ。
だからトリは気にやまないで。
俺がいなくなって、すんごく動揺…しちゃうかもしれないけど、というかしていたらごめん。
でもな。
俺がいなくても、トリはカッコイイから、すぐいい人見つけられると思う。
俺がいなくなっても、お前はちゃんと普通の生活、しろよ。
普通に女の人と結婚して、子供たくさんつくって、幸せな…生活、送るんだぞ。
…でもな、出来れば…出来ればで良いから…
俺のこと、忘れないで-------------
愛してるよ、トリ。
世界中の誰より、羽鳥芳雪を愛しています。
今も、そしてこれからも。
大好きだよ、芳雪。
吉野千秋より』
「千秋!!!!!!!どこにいるんだ千秋!!出てこい!!!!!」
手紙を読み終わってすぐ、俺は、声が枯れ果てるまで千秋、と泣き叫んでいた。
この日から、吉野千秋はどこにもいなくなってしまったのだった------------------。
to be continued....
[6回]
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