「じゃん!!」
ボロボロなはぼっくを見つけたろいは、はぼっくに近づこうと一歩踏み出しました。けれども、
「くるな!!」
はぼっくはそれを制しました。
(…強い妖力だな…)
はぼっくはところ構わずに妖力を発しないのですが、今はそれをすることすら余裕がないようでした。
「そんな人間共といるからだ、はぼっくよ。前のお前さんならこれしき『あの技』で一発じゃろ…。」
そう言って、はぼっくと同等レベルの妖力を放ちながら出てきたのは、東の大妖怪と言われているぐらまんでした。
「うっせ、ぐらまんのおっさん。あんたはこんな西だけの天下なぞ欲しくはないんだろ。でっかいのが欲しいはずだ。」
「ほっほっほっ。よくわかっているな、若造よ。…だがな、そうであってもわしがどうしても奪えなかった西の守護妖怪の頂点が、そんな弱々しいのではわしの名にも傷が付く。」
笑っていても発している妖力は増しているぐらまん。どうやら本気の忠告のようです。
「あんたも俺のことをお偉い妖怪としか見てねぇ。…だがな、親父から…何より母さんから唯一もらったこの役目だけは守り抜く!!!!」
はぼっくがそう言った瞬間、辺りは真っ暗になり、はぼっくの体は青白く光り始めました。
(結界を張らなくては…)
ろいはこの予兆はぐらまんのせいかと思い、とっさにはぼっくに結界を張ろうとしましたが、ぶれだに止められました。
「あんたの結界じゃ防ぎきれない。とりあえず母屋に戻ってくれ。」
「でもじゃんが…!!」
「だあー~もう!!はぼには言うなって言われたが、言うぞ!!今から出る技ははぼの野郎の技だ!!あんたが近くにいるとあいつの気が散るんだ!!自分の身も守れねぇ人間は大人しく言うこと聞いていろ!!」
そう言ってぶれだはろいを引きずり、部屋に入りました。
次の瞬間、雷が落ちたかのようにピカッと外が光り、辺りは焦げ臭くなりました。
少しして、ろいたちが外を見ると、はぼっくとぐらまん以外は誰もいなくなっており、辺り一面焼け野原になってしまっていました。
「やっと出しおったか~。うむ、いつみても爽快な狐火だわい♪うむ、ではわしは失礼するぞ。」
「はぁ、はぁ、…二度とくんな。」
この様子を見たろいとひゆうずは、驚きのあまり、立ちすくんでいました。
声を発することすら忘れていました。
その様子を見たはぼっくは一瞬落ち込んだ顔をしましたが、すぐに昔の冷たい表情をしてろいの方へと歩いてきました。
「そろそろこの茶番劇のような付き合いを終わりにしないか、陰陽師ろい・増田んぐ。…この通り、あんたがいなけりゃ本気を出してすぐうるせぇやつは黙らせられる。あんたみたいな弱い人間がでしゃばらなけりゃ、俺がすぐにみーんな邪魔者を片づけられるんだよ。だから二度と俺の前に現れるな。…それじゃあな。さよなら。」
この出来事以来、はぼっくはろいの屋敷を訪れることはありませんでした。
…そして2年が過ぎ、彼らはまた、運命のいたずらで、再会することになるのでした。
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