翌日。編集部で、美濃の話と俺の予測を皆に話した。
「う~ん…催眠術を解く方法ねぇ…。さっぱりだなぁ…。」
木佐がお手上げ、といったように両手を上にあげた。
「あ、俺、ヒントくらいなら聞いたことがあります。…えっと、確か…催眠術にかかっている期間が長いほど、その人の心を驚かせないとダメらしいんです。だから普通のマジックでやるなら、短時間しかやっちゃいけないらしいんです。」
「成る程、な。そうしたら小野寺、お前が長い間催眠術にかかったら、俺がアツいキスで目を覚まさせてやるよ。」
「はぁ?!!ぜ~~ったいそんなことやらないでください!!!!!!!」
心を驚かす…。
俺の力で、吉野を驚かすなんて出来るのだろうか…。
*****
あれから仕事の合間を縫って、作戦をあれこれ練った。作戦をしっかり立てた後、数日間有給を高野さんがとらせてくれた。
さらに、美濃が加藤の所属する事務所に連絡を取ってくれて、今日、やつとご対面することになっている。
名目は、作家の資料集めのためのインタビュー。作家は木佐が代わりに演じてくれることになり、俺は美濃の代理担当者として事務所に行くことになっていた。
「木佐、変なことにつき合わせてすまないな。」
「いいのいいの!!…というか…こういう時に不謹慎だけど、トリって普段完璧主義者~って感じだから、こういう部分が見られて安心したよ、人生の先輩としてはな。あーそうそう。加藤って人と会ったら、トリはすぐにトイレって言って席を外すんだぞ。…あの事務所の上の階が加藤さんのお住まいになっているみたいだから、すぐにそこに行けよ。管理人さんから鍵は預かっているし、ちゃちゃっと吉川先生を救出してきなよ!!…羽鳥王子サマ♪」
「…最後の言葉はいらんが、有難う、木佐。……さて、着いたぞ。」
木佐と打ち合わせ通り、事務所内に入り、加藤と会った。加藤は俺を見ても顔色を変えずに、木佐と淡々と話し始めた。
頃合いを見はかり、俺は席を外し、小走りで上の階へと向かった。
吉野にもう少しでたどり着く----------
だがこの時の俺はまだ、吉野を催眠術から解放する方法を決められないでいた。
[8回]
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