久しぶりに自分の母親から連絡が入ったと思えば、頼み事が用件だった。
用件を簡単に言えば、「子守代行」だ。
来週から1週間、父方の親戚の子を俺が預かってほしいとのこと。
吉野の母親にも相談していたらしく、吉野の仕事柄、吉野が家にほぼずっといるので、吉野の家で二人で預かるように指示が出た。
…幸い、校了明けなので何とかなるだろう…と思い、渋々了承した。
吉野にその話をしたら、予想以上に喜んでいた。
こうして、俺と吉野の1週間子守代行生活が始まった。
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「羽鳥芳秋です。一週間お世話になります。」
トリにそっくりなトリの親戚の子-----芳秋くんは、律儀に俺に挨拶してきた。
「こんにちは、芳秋くん。俺は吉野千秋。吉野で良いよ。俺は漫画家やってるんだ。日中は部屋に籠もってたりしてるけど、何やってても良いからね。困ったことがあったら遠慮なく言って!!あーあと、タメ口で良いよ!!」
「…うん、吉野、よろしく!!」
少し安心したのか、にかっと芳秋くんは笑ってくれた。
(にしても笑った顔も昔のトリにそっくりだなぁ…)
俺はトリから子守代行の話を聞いたとき、めっちゃ嬉しかった。
今描いてる漫画のネタに近い、「若夫婦」を疑似体験出来るからってのもあったけど、
トリと…その、子持ち夫婦みたいな生活が出来るなんて、またとない機会だと思ったんだ。
芳秋が来て4日たったある日、芳秋が控え目に俺の作業部屋の扉をノックして入ってきた。
「おぉー芳秋、どうした??」
芳秋は上目遣いをしながら俺に一枚の紙を差し出した。
「吉野、漫画家なんだろ??…その、俺も絵を描くの好きでさ…俺が描いた絵、見て!!」
一生懸命な顔で、俺にお願いしてくる様子はとっても可愛かった。
(でも確かトリは絵を描くのは苦手だった気が…)
おそるおそる紙を見たら、予想を遙かに越える上手さだった。
しかも、絵は俺とトリ。
「芳秋、お前めっちゃ上手いじゃん?!これ、俺とトリだろ??」
「うん。…その、吉野は、芳雪と一緒にいるときの笑顔が一番可愛いから。」
「か、可愛い??!!」
なんと小学生に可愛いなんて言われてしまった…。
さ、流石はトリの家系…。
「吉野は可愛いよ。…俺も吉野のこと大好き。」
俯きながら呟いたのは、俺への愛の告白。
…やっぱり血は争えないとか言うやつなのか。
とりあえず御礼は言い、その場を流した俺だった。
to be continued...
[3回]
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