「…諦めろ横澤。今日からもう一人頼むよ。…お前は優秀で可愛い嫁だし、心配はしてないんだが、何が嫌なんだ。」
「俺は嫁じゃねぇ…いっぺん死んでこい!!とにかく俺は絶対あんたの家には行かねぇぞ!!」
このやりとりは数分前から始まった。
俺は、急遽親戚の子供を3日間預かることになったのだが、頼りのひよがその間、俺の親と一泊小旅行に出てしまうのだ。
俺は家事は何一つ出来ないから、横澤にその3日間、俺の家で暮らせと頼んだ。
すると案の定、横澤は「ノー」と返答してきた。
こんな熊みたいなやつがいたらその子が可哀相だと。
結局怖がるかを今日俺の家で確かめ、大丈夫なら引き受ける、ということになった。
そうと決まればと、俺は、逃げられないよう、横澤を定時で迎えに行って、ひよの待つ家への帰路についた。
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桐嶋さんがいきなり営業の方に顔を出したと思えば、子供を預かるから一緒に暮らせと言ってきた。
俺は拒否したが、結局桐嶋家に来てしまった。
しかも桐嶋さんが預かった子はひよと同じ年で、俺にすぐに懐いたのだ。
旅行に行く前、ひよが俺のことを話していたらしい。
嬉しいような、複雑な気持ちだ。
子供の名前は「桐嶋 和香(わか)」。愛称は「わか」らしく、俺も和香の希望でわかと呼んでいる。
そして、何故かこの子は俺のことを呼び捨てで呼ぶ…。
「たかふみ、今日のご飯も美味しい。」
「あ、あぁ、良かった。」
このやりとりに大人の桐嶋さんものっかってくる。
「おいわか。横澤を呼び捨てにするな。」
「別に良いじゃん、ねぇたかふみっ。」
「……うーん…。」
そう言って俺を見るわかは、桐嶋さんが俺にお願いをしてくるときの目にそっくりだった。
「私たかふみ好きだよ。優しいし。禅には渡さない。」
(はぁ??今わかはなんて言った?!)
俺はどうやら、また大変な渦中に放り込まれたのだった---------。
[3回]
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