「ではブレダ、ファルマン、よう動頼んだぞ。」
「気ぃつけて。」
「はい。」
「店長とハボも。」
簡単な会話をすませ、特攻部隊のブレダとファルマンが店を出た。
「店長、今のうちに少し休まれては。本部は私とフュリーさんに任せてください。」
リザはロイが最近寝付きが悪いことに気づいていた。
司令官が弱っていては、部下に影響しかねない。
ましては今回の戦いではなおさら、である。
それを察したのか、ロイはリザの提案に素直に従うことにした。
「ではそうさせてもらおうか。…ハボック、話がある。ついて来い。」
「アイサー。」
ロイはハボックを連れて、店の奥にある自室へと辿り着いた途端にハボックにしがみついた。
「あんた熱が-------!!!」
そう。
リザが危惧したように、ロイは体調を崩していた。
「少し横になれば落ち着く。…それよりジャン。私は敵陣に乗り込む前に聞いておきたいことがある。」
ロイはベッドに横になり、同じく隣に寝転んだハボックを見た。
「お前、幼少期の記憶がないらしいな。」
「はい、気がついたら暗殺者として…『冷犬』として名が通っていました。」
ハボックには冷犬より前の記憶が抜け落ちていた。
本人も思い出そうとしてはいるが、これまで記憶は戻ったことがない。
「…ファルマンとヒューズに調べてもらっていたのだが、どうやらお前はウルボルスに所属していたようなのだ…。」
「へっ?!!」
「やはり気づいてはいなかったか…。…ここからは私の予想だが。」
ロイは一呼吸おき、話を再開させた。
「あいつ等の中に、私と似た力を使える奴がいて、何らかの理由でジャンの記憶を力で閉じこめたのだろう…。」
「『閉じ込めた』ってことは、消えてはいないんすね。」
「あくまで予想だがな。」
そこまでロイが話すと、ハボックはロイの目をまっすぐ見て問うた。
「…もしそうだとしたら、俺は元とは言え、ウルボルスにいた人間なわけだ。…ロイは俺が憎い??」
「いいや。」
「そっか。…でもウルボルスにひとつ感謝だな。この血だらけの手でも、鍛えてあるお陰でロイを守れるし。」
そうは言っているものの、少し悲しい顔をハボックがしていたのをロイは見逃さなかった。
そこで、ロイはこの話はいったん切ることにした。
「話はそこまでだ。…少し休もう、ジャン。」
「はい。」
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