アルティミシア討伐を経て、俺は周りから「伝説のSeeD」などと言われるようになった。
だが、そんなことはどうだってよかった。
それより重要な事件が、ここ、エスタでおこっていた。
【ラグナ・レウァール大統領失踪】
親友であろうキロスとウォードですら、彼の行き先を知らないという。
…エルオーネは知っていそうだったが、「わからない」と言っていた。
俺はキロスらに依頼をされ、困った大統領---------ラグナの捜索の任務に単独でつくことになった。
「単独で」なのは、一国の大統領探しという超機密任務なためだ。
「…とはいえ、どこを探せば良いんだ…??」
俺はエスタのホテルで一人、ラグナの居場所について悩んでいた。
俺はエルオーネにより、ラグナの過去を見てきた。
いつもラグナの周りにはキロスたちを始め、たくさんの仲間がいた。
ラグナはそんな仲間を一人残らず大切にする…そんな仲間思いなやつだった。
そんなラグナが俺の父親だと明かしてきたのはつい先月のこと。
『アルティミシアとの戦いが終わったら伝えようと思って…な。俺もずっと前から知っていたわけじゃなくて、エルから聞いたわけなんだけど…』
そう頭を掻きながらも伝えてくれた事実に、俺は喜びと悲しみを感じた。
『ラグナが父親だという喜び』と『ラグナが父親なことへの悲しみ』。
単純に、俺にないものをたくさんもっているラグナのような人が父親なら…悪くはないと思っていた。だから嬉しかった。
でも、同時に俺は、ラグナがふとした時に見せる鋭い目つきや優しい部分に惚れていた。…そう、一人の男として。
でも父親でレインを愛している…だから愛し合えない…そう感じて悲しかった。
…そんなラグナが俺の知らない場所へ行ってしまった。
まだラグナのことを少しもわかってない。わかったのは彼の過去の一部分と現在の一部分だけ。
せっかく「父親」で「想い人」なラグナに出会えて、俺は一人じゃないと実感したのに。
「ラグナ…俺はあんたが……」
「俺が何??スコール君??」
「うわぁぁぁ!!」
いきなり顔の横から話し掛けられ、驚いた俺は、座っていた椅子から落ちそうになった。
何とか持ちこたえ、横を向くと、声の主は、ホテルのボーイ姿をしたラグナだった。
「あ…あんた何やってるんだこんなところで。」
「んん~??似合わないか??…てか何やってるかって……愛しの息子のスコール君に会いに来た☆」
満面の笑みで答えられ、俺はこめかみを押さえた。
「…ラグナ大統領、皆様が心配しています。どうか自分のあるべき場所にお戻りを。」
俺は任務モードに切り替え、すぐさまラグナの説得にかかった。
「その…心配してるみんなの中に、お前はいるか、スコール。」
いきなり真面目な顔をして、ラグナは質問をしてきた。…俺はこの顔に弱い。
「当たり前だ。あんたはその…俺の父親なわけだから。」
「理由はそれだけ??」
「えっ…??」
それだけだと即答しなくてはならないのに、俺は戸惑ってしまった。
間が空いたのをいいことに、ぐっと顔を近づけてくるラグナ。
(か、顔が近いっ///)
一気に血が昇り、顔が熱くなった。
なおもじっと見つめてくるラグナ。
…そんなに見つめて、違う解答を求めているような視線を向けて…
「期待…してもいいのか…??」
「おっ、違う理由もあるのか、スコール君。言ってみたまえよ。ま~さか伝説のSeeDともあろう人が、「怖じけづいた」こたぁねぇよなぁ~??」
その言葉にムッときてしまった俺は、蓋にして閉じ込めていたもうひとつの理由を言うことにした。
「…一人の男として、あんたのことが好きで、…その…好きな人がいきなりいなくなったら心配にもなる!!!!」
俺が言い切った途端に、ラグナはきつく抱きしめてきた。
「…その言葉を待ってた、スコール。……今から話す話を聞いて、ヘタレなやつだって笑っても構わない。…んだけど俺さ、お前のことが好き過ぎて不安だったんだ。お前の父親なくせに、息子のことを……一人の人間として愛していいのかなって。」
どうやら俺もラグナも同じことで苦しんでいたらしい。
「だからな、俺、ラグナロク乗ってレインのところに行ってきて、聞いてきた。」
レイン-------ラグナを愛し愛され、俺を産んでくれた母親……。
「そしたらな、レインに背中、押された気がしたんだ。だから、エスタに帰ってきたら、俺がいないって騒がれてて、慌てて官邸にこっそり戻ったんだ。そしたらキロスたちはカンカンだったし……そんなときにスコールを見つけたから「これはチャ~ンス!!」って思ったんだ。」
(それでこの姿か…。)
俺はことの次第を理解し、複雑な気持ちになった。
そんなこともお構いなしにラグナはまたふっと真面目な顔をした。
「…ほんとに俺のこと愛して後悔しないか??スコール。」
「ふっ…今更何を言ってるんだ。俺は一生ラグナを愛したい。これまで一緒にいれなかった分を取り戻したい。」
「うん、うんうん!!よし、取り戻すぞ~!!んじゃまずは挨拶のキスなっ♪」
そういって、ラグナはくちゅ、と音をたてて俺にキスをした。
「……ぷはぁっ///」
「かぁ~わいぃぃぃ♪流石はエルと俺の息子っ!!可愛いな~全く♪」
「……//…お、俺はこ、子供じゃないからっ、こんなのじゃあその…ま、満足しないぞ///」
そういって、今自分に出来る最大限の誘い文句をラグナに投げかけた。
「おぅおぅ…うちの息子はお誘いも上手なわけね…。父さん感激~っ!!…上出来だっ!!…早く昔を取り戻して、そんでもって未来を創っていこうな、スコール。」
昔の失われた時だけでなく、俺との未来も求めてくれたラグナの首にしっかり腕を回し、これからくるであろう悦びに備えた。
有難うラグナ
我が儘でなかなか本音が言えない息子で恋人な俺だけど
願わくば
最期まで一緒にいてくれ
[4回]
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