「井坂龍一郎、あなたを横領の罪で逮捕する。」
この言葉を聞くことになる事情を知ったのは、遡ること僅か数分前だった。
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side:R
昨日から3日間、朝比奈は親父に同行するために出張に行った。
専属の主人である俺を置いて、だ!!
朝比奈のくせに生意気だよな…。
でもそれだけまだ俺は親父には届いていないわけで。
そう思うと俺は気を入れ直して仕事を再開した。
そんなとき、人生最大の事件がおこったのだ。
「専務、取締役の方々がお話をしたいとお揃いなのですが…。」
「はぁ??会議は昨日したばかりじゃねぇか。」
「そうも言っていられないことが起きたのだよ、井坂専務。」
「心当たりはないかね、専務。」
許可もなくズカズカと取締役のジジイ共が入ってきて早々に偉そうなことをほざいてきた。
ここはぐっとこらえて対応するに限る。
「いえ…心当たりは。ご用件は何でしょうか。」
朝比奈がいない分、何とか一人でこの場を凌がねば…。
そんなことを考えていたら、一人の取締役が到底有り得ないと思われることを言ってきた。
「先程警察が来ましてな。あなたに横領の疑いがかかっているとの説明を受けたのですよ。」
「…はぁ??」
謎だった。
どうして…どうなりゃ俺に横領の疑いがかかる。
とにかくわからないことだらけでフリーズをしていたら、噂の警察がやってきた。
そして冒頭の言葉に至る。
何とか正気を取り戻し、無実を主張するも、テレビでよく耳にする、「話は署で」という言葉を返された。
少しの正気でもう一度考えてみる。
俺は別に捕まっても無実なのだから、このまま同行しても良いが、次に疑いがかかるのは…そう、朝比奈だ。
あいつに何かあったら…俺の傍に置けなくなるどころか、あいつは責任感じて俺から離れようとか馬鹿なことをしかねない。
そう考えたとたん、俺はこんなことを言って丸川書店から逃げ出した。
「この俺様がそんなことやるわけがねぇ!!ぜってぇ無実を自分で証明してやる!!!!」
ここから、俺の孤独な戦いが始まった……。
to be continued....
[9回]
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COMMENT
拍手コメントありがとうございました
「続きが楽しみー」とのコメント、ありがとうございました。
後半戦に突入し、クライマックスももうすぐです。
またのお越しをお待ちしておりますー。