『もし俺がちょーイケメンになって。そんでめっちゃスゴいやつになったらよー、そんときはさ、八戒……。』
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「うぉっ?!!…くそ、夢か…。ちっ、まだ30分寝られるじゃねーかよ…。」
俺の名前は沙悟浄。
社会人3年目のサラリーマン。
こんな風貌でも、とある大手広告代理店で営業をやっている。
容姿端麗、チャラそうだけど真面目で、持ち前の営業テクで女にはモテモテ…が表の顔。
でも本当の俺はそれとは真逆。
親はDV野郎で、俺は施設育ち。
特に気を使うことはないところでは適当さを存分に発揮する。
媚びを売ってくるやつは大嫌い。
でもそんな俺にも、大切なヒトってのが出来た。
名前は「猪八戒」。
ガキんときから大学までずっと一緒だったが、八戒は就職せず、院に進んだ。
そいつと数ヶ月前…雪の日に久々に会って、「俺こいつのことめっちゃ好き」だと感じてその日に告白して関係も深めた。
そしてこの間、めでたく両想いを確定した。
まぁ、俺は今、属にいう幸せ者なわけだ。
そんな俺たちにいきなり大事件がやってきた…。
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「げ、出張…。」
「何か問題でもあるか、悟浄。」
「ナイデス、全くをもってアリマセン、三蔵サマ。」
俺は出社早々、上司である玄奘三蔵------こいつも年上だが施設時代からの幼なじみである------から出張を言い渡された。
しかも1週間。
(そんなに八戒に会えないなんてぜってー無理!!!何とか商談まとめて3日で帰ってやる!!)
俺は決意新たに、今日もがむしゃらに仕事をし始めたのだった。
出張の前に八戒に会っておこうと思った俺は、八戒と飲む約束をした。
八戒からはすぐ了承の返事がきたので、俺は本気を出して仕事を終わらせることにした。
「よっ、待った??」
「いいえ、大丈夫ですよ。お疲れさまです、悟浄。」
自然の流れで俺から軽いキスをして、予約した飲み屋へと歩き始めた。
「俺さ、週末から1週間出張入っちゃってさー…。あーでも3日で終わらせて帰るからな!!」
酒も少しは言った頃、俺は八戒に出張のことを話した。
ここでいつものウザい女たちなら、『えー寂しい~』とか騒ぐのだろうけど。
「そうですか…あまり無理をしないようにしてくださいね。」
八戒はそっと背中を押してくれる。
「ったくよー八戒!!お前可愛すぎっ!!」
「はぁ??どうしたらその結論に至るんですか…全く…。ふふっ。」
こいつとのこういう空気、俺はほんとに好きで、大好きで。
このときの俺は、そんな優しい八戒に、甘んじていた-------。
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