side:R
あれから2週間が過ぎた。
朝比奈が2回目に会ったとき、携帯が使えないのは不便だろうと、(俺は警察から逃げたとき、携帯を置いていってしまった)俺と朝比奈しか繋がらない携帯を朝比奈がくれた。
これで、朝比奈に会う日が決めやすくなった。
時々会っては、互いに情報交換をした。
何回かのやりとりで、俺と朝比奈は、だいたいの今回の黒幕の目星をつけることが出来た。
でも決定的証拠がどうしても見つからない。
そのことで悩んでいると、朝比奈が「提案がある」と言ってきた。
「私が直接攻撃をしかけます。それで私に狙いを決め始めれば、必ず反旦那様の一団で会議をするでしょう。そこをおさえれば
良いのです。」
一見スマートな案に思える。
しかしそれでは駄目なんだ。
「それじゃあしっぽが掴めなかったら、朝比奈が危ないじゃねぇかよ。」
「…龍一郎様。私は龍一郎様のためでしたら、何でもします。例えしっぽを掴めず、私が隆一郎様の秘書を出来なくなったとしても、どんな形であれ、龍一郎様のお側に置いていただければ私はそれ以外何も入りません。」
朝比奈の目は真剣だった。
射抜くような目は、俺の鼓動をどんどん早めていった。
「俺はお前のいない丸川に用はねぇよ。身の潔白は晴らさなきゃならねぇが、晴らした後、お前がいないなら俺は丸川を辞めてやる。…だからな、朝比奈。お前を失脚は絶対させねぇし、俺も絶対しっぽ掴んでやる。それで良いな。」
すると朝比奈は何時になく深く微笑んで、こう言った。
「…漸くいつもの龍一郎様に戻られてきましたね。私は信じていますよ、いつでもあなたを。」
その言葉が嬉しくて、俺は珍しく、自ら朝比奈に抱きついた。
side:K
桐嶋さんに協力してもらい、私が近々反社長派の一団を摘発するかもしれないとの噂を流してもらった。
その後すぐ、私は仕事中に視線をよく感じるようになった。
(様子を見ているな……)
視線を感じでも、それに気づいてない振りをし続けるのはかなり精神的に辛いものがあったが、龍一郎様のためと思えばどうとでもない辛さであった。
数日後、目星をつけていた一人の社員が、次の日の早引きを申し出た。
ここだと思った私は、龍一郎様専用の携帯を持ち、メールでそのことを伝えた。
ここまでは龍一郎様と私の作戦通り進んでいた。
しかし予想というものは、覆されるものであった----------。
『薫か??』
「龍一郎様…??どうされましたか??」
勤務時間が終わった頃、龍一郎様専用の携帯の着信が入った。
龍一郎様はこの携帯に電話をかけられたことはなかった。
『薫、今から会いに行っても良いか…??』
「まだ私は社内ですので…。少しお時間をいただけますか??」
『わかった。んじゃ2時間後に○×公園で。』
「…??承知しました。」
何かおかしい。
龍一郎様は外で私と会うことはなかった。
おかしい…
何かが…おかしい…。
しかし、私の考えは、すぐさま正しかったとわかる。
『…雨が降っているから…気をつけて来いよ。』
そう。
この言葉は龍一郎様に何かあったことを知らせるアイコトバ。
「…はい、龍一郎様もお気をつけて。」
to be continued.....
[1回]
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