「こ、ここは…。」
ロイは始めてみる空間に驚き、辺りをぐるりと見回した。
すると空間の端の方に、見慣れた金髪の少年が立っていた。
ロイは、この場所を把握するためにもと、その少年を呼んだ。
「もしかして、君はジャン・ハボック??」
ロイの声に振り返った少年は、ハボックの面影を持った少年だった。
しかし少年の目は何を考えているか感じられない、ダークブルーの目をしていた。
「あんた、俺を助けたいんだってな。」
「あ、あぁ…。」
少年はロイの問いかけを無視して、話を続けた。
「俺を助けるのは無理だよ。何せ、俺がそれを拒否している。」
「何故だ?!お前は『生きる』ために私を『信じる』と…言っていただろう?」
少年は臆せず話を進めた。
「確かに言ったな。でも俺は生き返ったとしても、あんたの傍にはいられない。…あんたは俺には眩しすぎるんだ。…結局俺はキリングマシンでしかない。」
「そんなことはない!!!!」
ロイは、力強く少年に反駁した。
「お前は…人間だジャン。…もう、お前を道具に扱う輩はいなくなったんだ。…お前は自由だ。…もちろん私の元に戻るかどうかも自由だ。
だがな、私は解放された今この時からの、真の『ジャン・ハボック』としての…一人の人間としての人生をお前にプレゼントしたいんだ。」
それを聞いた少年は、眩い光に包まれ、今のハボックの姿へと変えた。
「こんな…こんな俺でも、人間として…生きてもいいの??」
「あぁ。お前は人間だ、ジャン。」
それを聞いたハボックは、とても嬉しそうに微笑み、そこでロイの意識は途切れたのだった。
「マスタングさん!!!!」
ロイの意識は、リザのいつもとは違うロイの呼び方な甲高い声で戻った。
「ここ、は…。」
「俺の店だよ、ロイ。」
「ヒューズ…。」
「漸く終わったな、ロイ。お疲れさん。」
ヒューズにそう伝えられたロイは安心したかのごとく目をつぶったが、すぐに飛び起きた。
「じゃ…、は、ハボックは?!!!」
「犬っころは…ここにはいない。」
「何故だ?!私はあいつを……ん?!」
そこでロイは漸く自分の片目の違和感に気がついた。
「何だ…この片目…。」
ロイの右目は、黒目からダークブルーの目に変わっていた。
「ロイ、お前その目…。」
ヒューズもロイの片目に気づき、心配そうにロイを覗きこんだ。
対するロイは、片目から見えるビジョンに驚いていた。
ダークブルーの片目からだけ、全ての動きがスロー映像のように見えるのだ。
そこでふと、ハボックもそう見えると言っていたことを思い出した。
「どうやらこの目は…あいつのらしい。」
「おまっ…リザちゃんから粗方聞いたが、犬っころと何があった…。」
「…私はハボックを再錬成するために……。…!!」
『あんたがあいつを人間というなら、あいつにその証あげな。そうすりゃ再錬成を認めてやる。』
「そうだ…私はあいつに目をやった。」
「錬金術の等価交換…というものですか。」
「あぁ。…となると、ハボックは錬成出来ているはずだ。」
そこまで言って、ロイはあの白い空間で少年が言っていたことを思い出した。
『俺にはあんたが眩しすぎる』
(いつか…眩しいと感じなくなったら…戻ってこい、ジャン。)
ロイは、心の中でそう思い、再びベットに体を沈めた--------。
*************************
あれから半年後。
相も変わらず【star flame】は歌舞伎町イチを誇っていた。
その店の店長-----ロイ・マスタングは、いつものように店で一人、開店前のゆったりとした昼過ぎを楽しんでいた。
そこへ、気配を消してロイの背後へと、一人の男が近づき、銃を向けた。
「相変わらずガードが緩いっすね、『マスタングの旦那』。」
「…当たり前だ。優秀な恋人が私を必ず護ってくれるからな。…お帰り、ジャン。」
「ただいま、ロイ。」
the END...!
[1回]
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