Side:R
不覚だった。
あと少しで尻尾が掴める…そこまで来ていたところで、俺は目星をつけていた社員の一人に捕まった。
そして最近怪しい動きをしている朝比奈を懲らしめると、そいつは俺を使って朝比奈を呼び出させた。
…でも、最低限、朝比奈に状況がマズいことを伝えた。
朝比奈もわかったような声色だったので、まずはひと安心。
さてここからは俺の番。
これ以上朝比奈に頑張ってもらうと、朝比奈が危ないので、俺が締めをやる。
「お前、親父を陥れるために俺を使ったんだろうが、バレるのも時間の問題だぞ。」
俺の忠告をものともせず、俺を捕まえている奴は答えた。
「全てが割れる頃には、井坂は辞任しているさ。…そうなれば、いくらお前の無実が晴れたとしても、丸川には戻れないだろう。」
勝ち誇ったように言うそいつの顔は、私利私欲に満ちた顔だった。
(こいつ…完全に飲まれているな…。早く来い、朝比奈…!!)
そう俺が思っていると、俺のいる倉庫の扉が開いた。
そこに立っていたのは…
「朝比奈っ!!!」
「龍一郎様!!」
「やはり一人出来たか…朝比奈薫。」
朝比奈は一人で来た。
俺は朝比奈に、俺に何かあれば一人では来るなと言っていたのだが…。
「龍一郎様、申し訳ございません。やはりあなたを救い出すのは私だけでと思いまして、言いつけを破りました。」
そんなことだろうと思った。
「朝比奈薫。俺たちを嗅ぎ回っているようだが、これは警告だ。これ以上、こいつのために動くことをすれば、この場でこいつを殺(や)る。」
そう言って、そいつはナイフを取り出した。
俺は心の中で、
(あーぁ、朝比奈怒らせた。)
と呟いた。
「そうですか。龍一郎様にナイフを向ける意味をわかっていらっしゃらないようですね…!!」
ここからは鮮やかだった。
朝比奈は綺麗に相手のナイフ裁きをかわし、一本背負いでKOさせていた。
勿論ナイフは遠くに投げ飛ばすことも忘れていない。
「龍一郎様、お怪我は??」
「大丈夫だ。…朝比奈っ。」
俺は朝比奈によって縄を解かれるとすぐに、ところ構わず朝比奈にキスをした。
いつもなら、朝比奈が「公共の場で…」と小言を言うのだが、俺のキスにしっかり応えてくれていた。
俺の息があがると、朝比奈は静かに離れていった。
「警察には、龍一郎様の無実を証明するものを渡してあります。…直にここに警察も来ますのでご安心ください。」
静かに笑みを零す朝比奈。
…だいぶ心配をかけたな…と思う。
とりあえずはもう一度キスをしてお礼を伝えようと動いたその時。
【バンンンっ】
銃声が鳴り響いた。
そしてその銃弾は----------
「くっ……!!!」
「朝比奈!!!!!」
朝比奈の背中に撃ち込まれた。
to be continued...
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