俺はすぐさまさっき朝比奈が倒したやつを見た。奴は気がついていたようで、そいつの手に銃があった。
「この野郎!!!!!」
朝比奈だけでなく、俺も少しは護身術を使える。
俺も朝比奈ほどではないが、速攻で銃を蹴り落として遠くへやった。
「朝比奈…おい朝比奈……!!!薫っ!!しっかりしろ!!!!」
朝比奈は冷や汗をかいてぐったりしていた。
スーツの脇腹辺りが黒く滲んでいる。
「りゅう、いち、ろう…さまっ。」
「薫!!しっかりしろ!!もう少しで救急車、くるからっ(ひっく)」
こんなときに俺は泣くのを我慢することも出来ないのか。
いい年した大人なのにな…と冷静に考えている自分がいて少し驚いたが、もっと驚いたのは、
「か、かおるっ……んっ///」
こんな状況でも変わらない、朝比奈の強くて深い口づけだった。
「お守りッ……たしか、に、受け取りましたよ…龍一郎様っ……。」
この言葉が、朝比奈が気を失う前の最後の言葉だった。
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Side:K
私が目を覚ましたのは、龍一郎様のお助けに行ってから3日経った午後だった。
井坂家の奥様と私の両親が病室にいて、「よかった…」と涙をこらえながらおっしゃっているのを遠目で聞きながら、私は龍一郎様のことが気になって仕方がなかった。
医者にあらかた診察を受けた後、奥様から、御礼を言われた。
あのあと、警察に私が持って行った証拠がきちんと受理され、龍一郎様の疑いは綺麗に晴れ、取締役専務の任に戻られたとのことであった。
「薫君が撃たれて…龍一郎、すんごく落ち込んでいてね…。薫君が病室に運ばれたあとも、仕事に連れて行くのが大変だったのよ。『薫の傍を離れたくない!!』ってね…。ふふふ、やっぱり昔からずっと一緒にいたものね……。仕事に行っても、夜にはここに来ていたみたいよ。」
きっと仕事が山のようにあっただろう龍一郎様が、私の元へいつもいらしてくださっていたことに、胸がいっぱいになり、早く龍一郎様にお会いしたい気持ちでいっぱいになった。
夕方になり、奥様と両親が病室をあとにし、病室は自分ひとりとなった。
医者の話だと、数日以内には退院出来そうなので、わりとすぐに秘書職に戻れそうだな…と思い、病室に運ばれた自分のPCを探そうと、ベッドから降りたその時。
「あ、朝比奈っ!!!!!」
一番会いたい人-------井坂龍一郎本人が来てくれた。
「龍一郎様……!!」
龍一郎様はすぐに病室の扉の鍵を閉め、私にしがみつくように抱きしめてきた。
「馬鹿野郎…!!俺の傍を絶対に離れないって言っただろうが…!!」
「申し訳ありません……しかし、あなたがいなくなってしまったら、私は生きる意味がありませんから…。」
「それは俺も一緒だ!!アホ比奈!!」
「!!」
「お前が…死んじまうかと思って…俺……すんごく苦しかった。俺のせいで薫がいなくなったら…俺は生きていけねぇに決まっているだろ…。今の俺を作り上げているのは…他の誰でもない、薫、お前何だからな…!!」
「龍一郎様……!!あなたという人は…どうしてそう、私を甘やかすようなことばかり…!!」
嬉しかった。
龍一郎様がこれほどにも私を欲してくださっていることが。
どうしてもこの気持ちを伝えたくて、私は龍一郎様をしっかりと抱き寄せ、熱くキスを交わした。
「龍一郎様。」
「ん……何、薫。」
「私がこうして生きていられたのは、気を失う前に、龍一郎様の『御守り』をいただけたからなのですよ。」
「御守り??俺、あげてないぞ…??」
「熱いキスを…御守りとしていただいたので。」
「!!!!///」
「これからも御守りをいただけますか??」
「当たり前だろ!!//…死ぬまでお前を傍におけるなら、お安い御用だ//そ、その代わり、お前も俺にちゃんと『御守り』、渡せよ//」
「畏まりました、龍一郎様。私が死ぬまでずっと御守りをお渡しいたします。」
死が二人に訪れても
あなたの傍にいたいから
その願いが叶うように
いつもあなたに御守り(くちづけ)を
いつまでも共にいられるようにと
その御守りを手にいつまでも---------
the END...
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