雑誌を数冊立ち読みしていると、女子高生軍団がこんな話をしているのを耳にした。
「ねぇ、少女漫画コーナーに飾ってあった吉川先生の色紙、見た??」
「見た見た~!!あのイラストの人、絶対先生の彼氏じゃない??」
「うっそー!!でも確かにあんなキャラクター、吉川先生の漫画には出てきてないよね…。」
『吉川』という単語を聞いた時点で聞き耳は立てていた俺は、彼女たちが話していた、吉野が描いたファンサ用の色紙が気になり、それを探しに移動した。
実は吉野が『ぜーったい見るなよ!!』と念押ししてきたので、担当にもかかわらず、その色紙を目にしていなかったのだ。
(これか…??)
数分さまよい、ようやく吉野の色紙を見つけた。
そこに、この本屋の名物であろう店員がやってきた。
「羽鳥さん…ですよね??お疲れさまです!!お仕事ですか??」
無駄にキラキラした彼------雪名皇のオーラは、校了明けの俺にはだいぶ堪えたが、むげにせず会話をすることにした。
「いや、校了明けだから久々に寄ったんだ。」
「そーなんですかぁ。…あ!!そういえば羽鳥さんって、吉川先生のご担当ですよね??この色紙の人、今度新しく出るキャラとかなんですか??」
そう言われてまじまじと見てみたが、生憎思い当たる節はなかった。
「いや…。」
「うーん…。あ、でもよく見たら…羽鳥さんに似てる!!」
「えっ??」
「この目元とか髪型とか…!!もしかしてこの『いつもありがとう』って、羽鳥さん宛てかもしれないっすね!!」
あのあと、俺は吉野宅で作る夕飯の材料を買いながらも、その言葉で頭がいっぱいだった。
もしそうなら、今日は吉野を寝かせられそうにない
[11回]
PR
COMMENT