朝になっても、宮城は戻る気配がなかった。
しょうがないから、M大には、宮城が休む旨の連絡を俺からしといた。
俺がせかせかと宮城のために動いている間、宮城は俺たちの部屋を全て回っていた。
やがて、全ての部屋を回り終えた宮城は、リビングに来た。
「なぁ高槻。お前はその…この時代の俺といて…楽しいのか。」
いきなりこの宮城は俺にそう聞いてきた。
宮城が何を本当は聞きたいのかわからないけど、ここは素直に話していこうと思った。
「…楽しいよ。優しいし、時には叱ってくれるし喧嘩もするけど、俺は宮城と出逢えて良かった。
それに、な。安心しろ。『今』の宮城も、『先生』のこと、ちゃんと大切に想っているよ。」
言っていてとても辛かったけど、多分この宮城は『先生』について聞きたかったのだろう。
俺の言葉を聞いた宮城は、少し緊張した顔が和らいだ気がした。
「そう、か。…いや、今の俺からは、他人と一緒に暮らすとか、
そういうの、想像できなくてさ。」
だろうな。
多分このときの宮城は先生以外の他人と関わろうとしてなかっただろうし。
現に、俺が初めて宮城と会ったときでさえ、そんな態度をとっていたわけだし。
モヤモヤした気持ちがどんどん膨れ上がってきてしまったから、とりあえずさっさと大学に行こうと宮城に背を向けた。
あと少しで玄関…というところで、宮城に声をかけられた。
「忍。」
「なに??」
呼ばれた方へ振り向くと、先程までのしかめ面の若い宮城ではなく、
穏やかに微笑んでいる------俺が一番好きな------『今』の宮城がいた。
「みや、ぎ??」
俺はどうしても自分の目が信じられなくて、宮城かを確認するように疑問系で呼んだ。
「あぁそうだよ。…すまんな、心配かけた。」
俺はまだ現実を理解しきれていなくて、ただ立ちすくんでいた。
でも宮城はそんなこともお構いなしに、ずかずかと俺の方へと足を運び、ぎゅっと抱き締めてきた。
「とりあえずこれだけ。俺は本当にお前と出逢えて良かったよ。…好きだ、忍。」
いつもこうやって俺の不安を取り除いてくれる、そんな宮城を改めて好きだな、と感じた。
俺も
誰がなんと言おうとも
どんな宮城でも
大好きだよ
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後日談
「そもそも何であんな夢みたいなことが起こったんだ??というかあの間宮城はどこにいたんだ??」
「まず、俺の腹が急に痛くなって、次の瞬間、俺は地元の海辺にいた。しかも時代は先生が死んだあたり。
となると、二人の俺が、何らかの事象で入れ替わった…ってことになる。」
「成る程な。」
「それと、俺は片目でもう一人の俺から見たビジョンも見ていた。」
「えっ…。」
「だから忍。『俺』に言ったことは全部知っている。」
「…!!」
「嬉しかったよ。ありがとうな。」
「……//お、おう。」
[1回]
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