はぼっくが蓄えた妖力は尋常ではない量でした。
ただ、『ほむんくるす』と呼ばれた異国の妖怪-----今回の事件の黒幕-----も
とても強い妖力を持っていました。
(やはり相打ちでしかいけねぇか…)
相打ちを覚悟したはぼっくは、一気に距離をとって、残りの全ての妖力を『ほむんくるす』へぶつけるべく、準備をし始めました。
…その時でした。
「変換せよ!!!!!!!!」
ろいの力強い声が響き渡りました。
「ろい?!!!!」
そしてはぼっくの前にあらわれたのは、今までの雰囲気とは全く別のろいでした。
『なにやつじゃ…貴様は。』
「京都イチの陰陽師一族筆頭・ろい増田。」
『ほう…あの増田家か……。先代もわしとやりあって自爆したがな…。』
「ろい!どうしてこんなところに来たんだ!」
「もう二度と…大事なものを失わないためだ。」
「!!!!」
そういったろいの顔は、とてもすがすがしいものでした。
そして強い目ではぼっくを見つめていました。
「はぼっく。私はもう陰陽師ではない。」
「そ、それってどういうこと??」
「『陰陽転生』という術を発動させた。」
「!!!!それって…ろいの先代が……。」
「あぁ。お前の親父さんを守るため、陰陽の力を全て妖力に返還させようと発動させたのだが、失敗してしまった術だ。」
「なんでそんな術を発動させたんだ!!」
「大丈夫だ。私は死なない。…その代わり、人ではなくなるが。」
「ろい!今すぐその術を解いてくれ!」
「私を信じてくれ、はぼっく。…もうお前に守られてばかりは嫌なんだ。」
ろいは静かにはぼっくの手を握りました。
ろいが手を握った瞬間、はぼっくへ妖力が大量に流れ込み始めたのです。
「この量は…!!!」
「普通の妖怪だったら暴走する量だろうが、お前なら受け止めてくれるだろう。」
「もう…何言っても無駄みたいだな…。くそっ。知らないからな、ろい!」
そういってはぼっくは、強引にろいを抱き寄せ、荒い口づけをしました。
ろいもそれに必死に応え、逢えなかった数年を埋めようとしました。
「さぁて『ほむんくるす』。愛の力は絶大だってこと、教えてやるよ。」
数週間後。
ろいの屋敷にはまた小さな狐のような少年が居座るようになりました。
「わんころぉ…まーたお前こっちに降りてきて大丈夫なのかよ~。」
「あぁ。妖怪化しちまったろいは何かと不安定な状態だから、俺が見といてやらねっぇと。」
「そうかよ…。ったく、仲直りしたと思ったら前以上にいちゃつきやがって…。
(ま、ろいが幸せなら俺はいいけどよ。)」
「はぼっくー!!!まずいぞ、妖力がぁーΣ」
「んじゃシよっか♪ろーい♪」
「ぐはっ!いきなり妖怪化して大きくなるな馬鹿者―!!!」
こうして、一匹の妖怪と一人の陰陽師の力によって、京都に平和が戻ってきたのでした。
めでたしめでたし
[4回]
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