Side:三蔵
「-------っ!!」
俺はどこかに落とされたことによる激痛と共に意識を取り戻した。
しかし案外打撃はピンポイントで、俺が落ちた場所はベッドの上だったため、大怪我には到らなかった。
そうと決まればと俺は、体を打ち付けた場所を摩りながら状況把握のため、辺りをゆっくりと見回した。
「だいぶ無機質な部屋だな…。」
「…無機質で悪かったな…。」
いきなり自分と似た声が返ってきて驚いた俺は、小銃を構えて振り返った。
振り返って目が合った部屋の主は、俺と同じ金髪のロン毛野郎だった。
「おいやめろって。俺は武器なんざ持ってねぇ。…物取りじゃねぇならさっさと俺の部屋から失せろよ。」
「…ここはどこだ。」
「はぁ…??お前天界(ここ)の人間じゃないのか…??」
「多分違うと思う。」
「『多分』…ねぇ。…お前名前は。」
「唐亜玄奘三蔵。」
名乗った途端、部屋の主はしかめ面をして何かを考え始めた。
「と、とうあ…??…いや、でも確か下界の書物で…。…あっ。お前もしかして『経文』ってやつを持ってるのか??」
「…魔天経文と聖天経文を継承している。」
「二つもか!!…ということは、お前下界にいるっていう『三蔵法師』ってやつか!!」
「あぁ、そうだ。」
どうやら三蔵法師について少なからず知っているようだった。
そこに、俺がよく知る人物が部屋に入ってきた。
「金蝉~ただいまっ!!……!!??こ、金蝉に似てる人がい、いるっ!!えっ、何??金蝉の兄弟??」
「んなわけあるかっ。コイツはいきなり俺の部屋に侵入してきた天界人じゃない…多分下界の人間だ。」
「げ、かい…??あぁ!!天ちゃんとかケン兄ちゃんがよく遊びに行ってるところか!!」
俺のよく知るバカ猿よりも猿具合が強い…しかし確かに悟空である人物と出会えた。
(悟空がいる俺達の知らない世界…ということは、ここは500年前の世界なのか。)
「お前金蝉と言うんだな。」
「あ、あぁ…俺は金蝉童子。観世音菩薩とは親戚…だな。」
「俺はね!!孫悟空!!金蝉とか天ちゃんとかケン兄ちゃんとかと仲良しなんだ!!あ、それとね…」
どうやらこの金髪が夢の中の俺だった人物…金蝉らしい。
そしてこの時代のバカ猿は話好きらしく、聞きもしないことをペラペラと話してきた。
それは今もそんなに変わらないが…。
「金蝉。俺は観世音菩薩にここへ飛ばされたんだ。よければ菩薩に会わせてもらえないか。会えるなら、枷をしてもらっても構わない。」
「なんだよー俺のこと無視かよ~。」
「お前は黙っていろ、悟空。」
そう言って悟空をなだめつつ、考える姿勢をとる金蝉。
「あんたさーなまえは??」
「…唐亜玄奘三蔵。」
「ぞーだ??」
…このやりとりを以前にもしたな…と振り返り、少しだけ笑みを浮かべる三蔵。
「三蔵、でいい。」
「さんぞー…!!うん!!さんぞーも金蝉と同じ金ぴかな髪の毛なんだな!!きれー……。」
「おい悟空、じっとしていられんのかお前は。……三蔵法師、一応考えさせてくれ。それまではこの部屋に……」
と金蝉が話している途中に、ドアが勢いよく開かれた。
「おーい、金蝉はいるかー??」
To be continued.
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