Side:八戒
八戒と天蓬は、三蔵らとわかれ、天蓬の部屋を訪れていた。
「凄い本の量ですね…!!」
辺り一面にある本を一冊一冊拾いあげては感慨する八戒。
「下界に行った時に興味のある本を買ったり、書庫から盗んだりしたらこんな感じになっちゃって…。」
天蓬が言っていたように、部屋一面にあらゆるジャンルの本がちりばめられていた。
「…部屋は何だか嵐が去ったかの如く凄い感じで…」
「ハハハハ…普段は捲簾に片付けてもらっていて…(笑)」
見た目はそっくりな二人だが、性格やは真反対な二人であった。
ふぅ、と息を吐き、馴れた手つきで煙草を吸う天蓬。その一連の動作を眺めていた八戒は、ふと自分の想い人---------悟浄を思い出していた。
「煙草も…吸われるんですね。」
「えぇ。これが美味しいと、『生きてる』って感じられるんで、止められないんですよ。」
「フフ…悟浄もそんなことを言っていました。」
「…失礼かもしれませんが、赤髪の…悟浄さんとあなたは…三蔵法師さんとは違う気を感じるのですが…。」
「流石軍人のお方だけあって、鋭いですね。」
「…では……」
「はい。悟浄は妖怪と人間の混血(ハーフ)です。僕は…元下界人の妖怪です。」
「やはり…。でも暴走していらっしゃらないのはそれが理由…何でしょうか。」
「暴走が全く起こらない確証はないのですが、抑えられているのは確かなようです。…それに僕が暴走しそうになった時は悟浄が止めてくれますから…。」
天蓬の当たり障りのない言葉遣いを聞いた八戒もまた、自分と似た部分を感じ取っていた。
「…信頼されてるんですね、悟浄さんのこと。」
ぽつりと、しかし力強く一言を放つ天蓬。
それに応えるかの如く、天蓬をじっと見つめる八戒。
沈黙の中で、二人は会話をしているかのようであった。
「ふふっ…話題な方々がいらしたようですね。」
そう言うやいなや、ドアが「バン!!」と激しい音と共に開かれた。
「おーい天蓬元帥殿~生きてるか~??」
Side:八戒&悟浄
「捲簾…あなた僕の部屋をちょっとしたジャングルとでも思ってるのですか…??」
「あら…生きてた。」
「八か~い。元帥殿に変なことされてねぇか~??」
「悟浄あなたまで…僕は普通に天蓬さんとお話していただけですから…。」
4人が揃い、彼等と打ち解けた悟浄と八戒は、互いが見ていた夢を話した。
「成る程…夢の中であなたたちは僕らだった…というわけで。」
「しかも俺達死ぬのか…」
「正夢…なんてことはないとは思いますが…。」
「でもよ、俺達の先の人生について聞いたところで、俺らの『生き方』は変わらねぇよ。」
「う~ん…僕はどうせなら本に埋もれて死にたいです。」
「お前なぁ…;」
初めて出会ったはずなのに、何故か安心する「彼等」の傍。
一時の安らぎを感じながら、「彼等」はもう一組の帰還を待った。
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