Side:三蔵
「「失礼します。」」
三蔵と金蝉は同時に一言申してから菩薩の部屋へと入った。
「おぉーおぉー。『同じ魂』が揃いも揃って。」
「「……??!!」」
「おい、それはどういうことだ。」
驚いた金蝉は、直ぐさま真意を確かめようとした。
三蔵は三蔵で、一瞬驚いたが、何か考えているようであった。
「…ま、玄奘三蔵は理解したようだから話してやるか。…金蝉。玄奘三蔵は、500年先のお前の生まれ変わり、だ。」
金蝉はそれを聞いて絶句した。この目で自分の生まれ変わりを見る日が来ると誰が予想しただろうか。
「菩薩。多分俺だけでなく八戒やクソ河童も薄々感づいているはずだ…。」
「そうか…んでお前たちはこれからどうする。」
金蝉が混乱しているのを他所に、三蔵と菩薩の話は進む。
「元に戻る方法はある…のだな。」
「ないのに送り込むようなことはしねぇよ。」
「ならばもう少し…ここに残る。」
意外な言葉に驚く菩薩と金蝉。
「残る…だと…??!!」
「あぁ。世話になる、金蝉。」
菩薩との話を終え、とぼとぼと来た道を戻る2人。金蝉は未だ混乱しているようだった。
あのあと、三蔵から悟空と共に生活していることや、500年先の悟空は天界の記憶を有していないこと---------など、様々なことを聞いた。
何より自分よりも悟空のことを知っている三蔵に対して、悔しい思いでいっぱいだった。
「…いくら長い時をサルと過ごしていても、『悟空』という名を与えたのが、金蝉、お前だということに変わりはない。サルが一番喜んでいた名前を与えた…お前の存在は大きい。」
「ありがとう…な。…あいつ、『今』、幸せ…か??」
ふと遠くを見つめながらぽつりと「あぁ。」と応える三蔵。
「ならいい。」
金蝉もまた、ぽつりと返事をした。
Side:all
それから、金蝉たちが忙しいときは三蔵らが悟空の遊び相手となっていた。
「はっちゃん…絵本飽きた~。」
「はいはい。じゃあ悟浄と外で遊んできていいですよ。」
「やったぁ~!!悟浄兄ちゃん~キャッチボールしよー」
「おう、いいぜー。」
その様子を、金蝉の代わりに書類を捌いている三蔵はほほえましく思った。
自分達に出会う前、悟空は幸せだったのだと確認出来た。
…なのにどうしてその時の記憶を自分達の知る悟空は知らないのか…それだけが疑問だった。
「三蔵が笑うなんて、明日は雪ですか??」
「…笑ってなどいない。あいつらの阿呆面に呆れていただけだ。」
「…そういうことにしておきます。…それより三蔵、ナタク太子の話…聞きました??」
「あぁ…この時代に『作り上げられた』者だったのだな…。」
「…ナタクの父親の李塔天が、悟空の力……斉天大聖の力を狙わなければ良いのですが…。」
「そう…だな。」
このあと、八戒の予想は見事に的中してしまう。
ナタク太子が悟空を殺そうと刀を向けたが、自害未遂に至り…
それを目の当たりにした悟空は金鈷が外れ暴走し、天界人大量虐殺を起こしてしまう。
何とかその場にいた天蓬、捲簾が場を収め、悟空を連れて逃走。
現在、三蔵ら、金蝉も合流し、天蓬の部屋で作戦会議を開いている。
「さて…悟空の熱は収まりませんし、どうしますか…」
「まずは…だ。お前らはどうするよ、悟浄。」
彼らは三蔵たちと向き合った。
「あなたたちには『今』の悟空と幸せに暮らせる世界があるわけですから、その世界に帰るべきです。」
「それに…だ。ここは『俺たち』の世界だしな。」
「今なら菩薩のやつもお前たちを元の世界に戻す余裕があるはずだし…な。」
「…わかった。俺達は手出ししない。」
「というより、菩薩さんによると、僕らによってここに影響が出そうになったら、消えるみたいなので、手出し出来ないんですよね…。」
「だから俺らはここらでおいとま…だな。」
互いに目だけで別れを惜しむ。
「…ところでそちらはこれからどうされるんです。」
「そうですね…。」
「ここは逃亡者らしくよ……。」
……
……………
「…では貴様らの要求はなんだ!!」
「…そうですね~ここは逃亡者らしく…『下界への亡命』ですかね。」
『この次に会うときはきっと-------------
下界の桜の木の下だ………』
to be continued.
[5回]
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