身体がもう金蝉らに見えない状態になった三蔵らは、完全に消えるまで彼等を見届けようと、傍にいた。
「サルが桜を見ると大切な何かを忘れているってよく言っていたが……」
「きっとこの約束でしょうね…。」
「てことは…だ。アイツはまだ約束…果たせてねぇんだよな…。」
「……。」
少ししてから、金蝉らは逃亡のため、異空間ゲートを目指して出発した。
爆発音と共に人質の竜王敖潤を連れて異空間ゲートへと進む金蝉たち。
敖潤を途中の書庫で置いていき、先を急ぐ4人。
ゲートへの道は、苦戦するものかと思えたが、流石は西方軍きっての武道派な天蓬と捲簾。
彼等が先陣を切ってどんどん道を作っていく。
途中の危機的状況でも、彼等の部下たちの助けもあり、彼等は無傷でゲートへの道を半分進めたが、流石に敵が増えてきたので、迂回ルートを辿ることになった。
「おっ、出口だ。」
彼等が降り立ったのは…「ナタク」の巣窟だった。
流石に戦闘力皆無者を2人連れて「ナタク」から逃れるのは不可能と判断した天蓬と捲簾。
「俺が囮になるわ。」
即答で囮宣言をする捲簾。
「いいえ、僕が…!!」
「ばぁか。お前の得物は接近戦じゃなきゃ不利だろ??銃持ってる俺の方がまだ生き残れる…だろ。」
「……。」
「なぁに辛気臭ぇ顔してんのよ、元帥殿。…俺はお前置いて先逝ったりしねぇよ。…いつでもお前の隣にいてやるから安心して先行ってろ。(ちゅっ)」
真面目な顔をして天蓬の唇を掠めとる捲簾。
「はぁ…わかりましたよ。…別に心配なんかしていませんよ。ただ、大怪我されたりしたら、掃除すぐしてもらったり出来ないなぁと。」
「へいへい。んじゃカウントすっから…いくぜ!!」
こうして捲簾を置いて先を進むことにした3人。
そのあとを三蔵らも追おうとした。しかし、一人歩みを止められた者がいた。
「うおっ?!」
「悟浄?!」
「わり、俺この先行けねぇみたいだ。足が動かせねぇ。」
「わかった。『先行ってろ』。」
「あぁ。」
軽い返事をして、三蔵と八戒は先を急いだ。
Side:悟浄
こうして「ナタク」の巣窟に残った捲簾と悟浄。
捲簾は怪我を増やしながらも「ナタク」たちを確実に減らしていった。
あらかた倒し終わり、ぐったりとなる捲簾。
「おーい悟浄…近くにいたりしねぇかな…。」
捲簾には悟浄が見えていないはずなのに、何故か悟浄がいる方を見て話してきた。
「まぁ…どっちでもいいか…。確か八戒が天蓬の生まれ変わり…なんだよな…。…八戒のやつ…あいつに似て美人だったなぁ…。でも、俺似…つうか生まれ変わりな悟浄が、これまた天蓬の生まれ変わりな八戒のことを大切にしてて、安心したんだぜ…。…俺は天蓬の約束…守れねぇかもしんねぇけど…お前は死んでも護るんだぞ…悟浄…。逝く時…は…一緒に逝ってやれよ…。」
まるで悟浄に別れの言葉を述べるかのように語る捲簾を、悟浄はじっと見つめていた。
「捲簾…それはあんたとの約束…だな。俺はあんたと違って約束は守る派だから、きっちり果たしてやるよ…。」
「「また…な。」」
Side:三蔵&八戒
「ケン兄ちゃん何で置いてくんだよ!!」
「捲簾は後から来る!!だから前を向け、悟空!!」
ひたすら地下を目指して走る金蝉、悟空、天蓬。
天井から、とある物置部屋へと下りる。
「…あの突き当たり曲がると、異空間ゲートに出られると思います…。さて、ここまで来たら道案内はいらないですね!!」
天蓬は意を決したように一気に話す。
「三蔵。多分僕も進めるのはここまでのようです。」
「やはり…か。どうやら俺達が見た夢の部分までしか関われないようだな…。俺はこの先の夢も…見ている。」
「そうでしたね。…では三蔵、『お先に』。」
「あぁ。」
そういって、天蓬と八戒は同時に扉から飛び出た。
Side:八戒
(もしかしたら、心理に語りかけることは出来るのかな…)
八戒はどうしてももう一度天蓬と話したくて、意識を天蓬に集中し、心に語りかけることにした。
[天蓬さん……!!]
天蓬は次々と軍人を倒していく。
…話し掛けられている気持ちになり、心の中で返事をしてみた。
[はい??今ちょっと取り込み中なのですが。どちら様で。]
[…八戒です。]
戦いながらも、ほんの一瞬だけ驚く天蓬。
[…あなたも物好きなのですね…。気配が若干近くでしていましたが…もしや近くに??]
[その…まさかです。どうしてももう一度あなたとお話したくて。]
沢山の返り血をものともせず、一人でも多く倒そうとする天蓬。
しかしその姿は何故か汚くなく、天蓬の顔には笑みが浮かんでいた。
[奇遇ですね。私もです。…これも魂の共鳴ってものなのですかねぇ…。]
[ふふっ。ではお忙しいようなので簡潔に。…天蓬さん、捲簾さんのこと…]
そう語りかけたときに、明らかに猛者のような人が天蓬の前に現れた。
[八戒さん。]
澄んだ声で語りかけてきた天蓬。
[…悟浄さん、フラフラして危なっかしいですから、隣を離れないであげてください。…『今度は』最期まで一緒にいてあげてください。]
『…待たせ、しました』
[2回]
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