空が紅く染まっていく様子を一人じっと佇んで眺めていた少年がいた。名をヴァンと言う。
空族のなんたるかを教えてくれた存在で、自分の愛機「シュトラール」を自分に預け、前回の旅では自分に「愛している」と囁いてきた、「最速」の名をもつ最強の空族-----バルフレア。
ヴァンはその彼と最後に会ってから半年が過ぎ去ろうとしていた。
互いに空族をしているのだから、顔を合わせることが多いだろうと思っていたが、そんな期待はいともたやすく裏切られ、愛を囁かれて以来、彼の顔を見ていない。彼から文のひとつもない。
風のうわさは良く耳にする。
それも決まって「バルフレアに美人の愛人が出来た」というたぐいの噂。
ヴァン自身、当初「俺もあんたのこと…愛してるよ」と返答したが、流石にそのたぐいの話を聞き過ぎると、自分は本当に愛されているか自信がなくなってきていた。
そんなことを思いながら、綺麗な夕日に染まった空を眺めていた。
「やっぱりあんたは…自由に空をかけている方が良い…んだろうな…。空(おれ)に縛られてるよりも。」
「それはないな…いくら自由な空を駆け回っても、お前みたいな極上な自由の空を手放すわけにはいかない。」
ふと自分の呟きに返答してきた懐かしい声に驚き、座っていた塀から落ちそうになったヴァン。
それをやんわりと受け止め、がっちりと抱きしめるバルフレア。
「俺の空の女神のへそを正しに帰ってきたぜ、ヴァン。」
「…馬鹿っ//遅いんだよ、最強の空族だったら奪った空(おれ)を大事にしろよ///」
「りょーかい、俺の女神サマ。」
[5回]
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