今から5年前。
ジャン・ハボックは凄腕のフリースナイパーだった。
「…今度のターゲットは、こいつだ。名はロイ・マスタング。
やつは歌舞伎町で店を立ち上げまだ2年の若店主だが、歌舞伎町No.1の店争いをするほどらしい。だからか敵も多いみたいでな。今回はその敵さんからの依頼で、暗殺してほしいとのことだ。」
「…ふ~ん。んで、殺し方はこだわりなし??」
「あぁ、好きにしていいぞ。終わったら連絡してくれ。」
「アイサー。」
そう言ってハボックは書類を拾い、事務所をあとにした。
(ロイ・マスタング…。)
帰り道に写真を改めて見ると、中性的な顔立ちで、上品さも漂う容姿な彼。
いつもならすぐに殺して仕事を終わらせるハボックたが、なぜこのような人が歌舞伎町なんかに…と不思議に思い、ハボックはその店に侵入することにした。
「ホストクラブか…。ホストのナリは俺には無理だからな……。」
自宅に帰り、様々な衣装がある中から、ハボックはどんな役柄に徹しようか迷っていた。
「歌舞伎町…ホストクラブ……。よし、これにしよう。」
そう言ってハボックが手にとった衣装はチンピラの衣装だった。
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「マスタングの旦那はいるかい??」
夕方近く、ハボックは先程の服装でマスタングの店を訪れていた。
「あいにく店長は出かけていまして。…失礼ですが、お名前は。」
「あれ??事務管理やってるリザさんじゃないですか!!ちーっす、俺、ヒューズさんの依頼を受けてマスタングさんの護衛に雇われました、「ジャック・ハボック」って言いますっ♪よろしくっす~。」
「あら、ヒューズさんが…。まぁいいわ、よろしくね、ハボックさん。」
「またヒューズのやつが勝手に何かしてきたのか??」
「お帰りなさいませ、店長。」
リザの後ろから颯爽と現れたのは、ハボックが殺すターゲットのロイ・マスタング本人だった。
(…か…可愛い……)
実物に見とれて、微動だにしないハボック。
「何か私についてるか??ハボックさん。」
「…あっ!!い、いえ何もっ!!(おい、相手は男で殺す相手だぞ?!何やってるんだよ俺っ!!)」
「護衛…か。仕事中は邪魔にならないように。ウエイターくらいは出来るな??」
「ういっす。」
「それと私のことは「店長」と呼ぶように。」
「アイサー店長~。」
それだけ言って、マスタングは店の奥へと消えた。
ついて行こうとすると、リザがハボックの腕を掴んで引き寄せた。
「くれぐれも、店長のことを名前で呼ばないようにね。」
「えっ…??何でですか??」
「色々事情があるの。雇われ護衛のあなたには関係ないわ。それと、護衛はこの店内と店長の行き帰りだけで良いわ。あとは私がやるから。」
「はぁ…。」
そう言われたハボックはポツンと一人、店内に残されたのだった。
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ハボックが潜入して1週間が経った。ハボックは情報屋のヒューズのところに行った。
「おい情報屋。あんたとロイ・マスタングの関係は??」
「…んだよ、いきなり…。金は??」
「ゴマンとあるから早く教えろ。」
ヒューズは髭を摩りながら遠い目をして話し始めた。
「俺とマスタングの旦那…てかロイとは昔からの親友だよ。あいつのことなら何でも知ってるし、あいつのために俺は情報屋やっているようなもんだ。」
「…ロイって呼べる仲なんだな、あんたは。」
「んん??何だ??」
「いんや。にしても裕福そうなロイ・マスタングが、何でホストなんてやってるんだ??」
「お前さん、ロイに興味あんの??てかロイ殺そうとしているんだろ??」
「そこまで知っていてあんたも俺にロイ・マスタングの情報を教えるのか??」
「ハハハ…。まぁさておき、あいつはある男を探すためにホストやってんだ。これ以上は俺もしゃべれねぇけど、そのためには歌舞伎町でNo.1にならなきゃいけなくてな。」
「ふ~ん…。今日はこの辺にしといて、また来る。金はこんなもんでいいか。」
ロイ・マスタングにはわけがあって歌舞伎町にいると知ったハボックは、ますます彼のことを知りたくなった。
「おう、申し分ねぇな♪それとジャン・ハボック!!」
「…??」
「…お前以外もロイ暗殺を請け負っているやつがいる。お前さんと同等くらいの腕のやつがだ。」
「へぇ…。」
「それだけだ。じゃあな~【冷犬】ハボック。」
「その名前は嫌いなんだ。次呼んだら頭ぶち抜く。」
思わぬ情報も仕入れたハボックは、店へと戻ることにした。
[2回]
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