いきなりこの男は私…が雰しているローズに謝りたいと言ってきた。何が何だかさっぱりだが、私は先を促すような目線しか出来なかった。
「俺はローズさんを…俺の上司の人の代わりとして接しています…。俺はあなたを…好きにはなれません…。ほんとに失礼な話だってのはわかっています。今から水なり何なりと引っ掛けてくれていいです。でも俺は…俺は大佐が好きだから…「ハボック!!!!」…!!??」
かなりの勇気をハボックは使っただろう。失礼を承知で…それでも私への想いを大切にしたいと…。
私は急に自分がやっていた行為が恥ずかしくなった。
こんなまどろっこしいやり方はロイ・マスタングらしくない。
彼-----ハボックが知っている私は--------
「堂々と、真正面からでも欺き、はい上がっていくスタイルだ。」
「へっ??」
そう。時には味方をも欺き、最善の策を踏む。
女性を口説くなど百戦錬磨。
しかし……大切な人の前ではそれらは意味を成さず、何も出来ないちっぽけな人間。
「本当の私を出すべき…か。」
「ろ、ローズさん…??」
いかんいかん、すっかりハボックを忘れていた。
ここはとりあえず、着飾るのをやめにしよう。
「ハボック。こちらこそすまない。」
私はヒューズが用意し装着していたウィッグを外した。
「た、大佐っ??!!」
ウィッグを外してすぐに私とわかったハボックは、これでもか、というくらい目を見開いていた。
「…ローズという女性は実在しない。手紙のやり取りも全て私がやっていた。…その、お前を騙すようなことをしてすまなかった。」
「よかったぁ…!!」
「えっ??」
普通こんなことを聞いたら誰だって怒るはずなのに、ハボックは予想と真逆の反応を返してきて、今度は私が驚いた。
「俺がローズさんから感じていた大佐のひとつひとつは、間違いじゃなかったんすね…!!手紙の字体も、どこか気高い感じも、身近な人間以外に接するときの態度とか作っている笑顔とか…。」
そこまで私を見ていたなんて、気づかなかった。ハボックは私のひとつひとつをきちんと大切にしてくれていた。
人を騙しといて難だが、とても幸せな気持ちになった。
こんなに私のことを見ていてくれている人はこれまでいなかったから-------。
「大佐、気を取り直して言いたいことがあるんすけど、良いですか??」
「あ、あぁ…。」
「有難うございます、sir.」
ハボックは、先程ローズだった私に向けた笑顔以上にカッコイイ笑みを私に向けてくれた。
その瞬間、一気に私の心臓は騒がしくなる。
柄にもなく緊張しているのか、手にはしっとり汗をかいていた。
「俺は大佐のことが好きです。もちろん上司としても好きだし、一生護りたい隣の人としても大好きです。愛しています。…俺にあんたの残りの人生をちょうだい。一生、一秒たりとも無駄にしない。幸せにしてみせる。」
「はい…。///」
ハボックの恥ずかしい告白に私は顔がこれでもかというくらい熱くなり、ただ二つ言葉を返すだけになってしまった。
「や、やったぁ!!大佐、まじ大好きっす!!!!」
「馬鹿者っ。こんなところで叫ぶな抱き着くな!!」
「えぇーだって大佐は俺の隣にずっといてくれるんでしょ??こんな極上の幸せが手に入ったのに、何もせずにいられないっすよ~♪あ、大佐、「ロイ」って呼んで良い??」
「……あぁ、良いよ、「ジャン」。//」
「うわ~//ヤバい…。ロイに名前呼ばれた…//」
Side:supporters
「なぁ、俺達なんなんだろうな…。」
「とりあえずもう飲みに行きましょうや…。」
互いにこの結末を読んではいたが、いざ目の前にしたら嫌になる程ピンク色の空気を運ぶ威力を発揮したロイとハボック。
それに対して、仕組んだ2人はげんなりとしていた。
「でも……ロイのあんな笑顔、初めて見たな。」
「えっ…??」
ふっと微笑んで、どこか嬉しそうなヒューズ。
ブレダはヒューズの次の言葉を待つため、黙っていた。
「親友である俺だからこそ、あいつの悩みとかそういう部分は誰よりも知っているつもりだが、あんな幸せそうな顔はさせてやれなかった。…そのあたりはわんこを褒めてやりたいな。…あいつは幸せになっても良いんだ…いや、幸せになって癒されるべきなんだよ。…ただでさえ命をかけてこの国変えようとしているんだから…な。」
次は俺の番の如く、ブレダもようやく口を開いた。
「…俺も、ハボのあんな顔は初めてっすね。あいつ、普段は人懐っこい感じだから、男女関係なくモテはするんですが、寄ってくる相手は、普段以上の忠犬さを求めてくる。そういうのが嫌いなあいつは、すぐ心を読めなくしちまうんです。だけどあいつは大佐には心を開いた。しかも自分からさらけ出して、自分を見てくれ、みたいな態度もとっている。…てことは、大佐はあいつにいつも以上の忠犬を求めず、対等に、時には厳しく、時には甘えてくれたり…そういうことを求めている相手だってことなんすよね。」
「互いに欲していた相手…ってことだな、同類っ。」
階級も年齢にも差があるけれども意気投合したヒューズとブレダは、互いに肩を組んで、ピンク色な2人の側を離れていったのだった。
THE END
[2回]
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