さて、ろいはと言うと、女装をして事件が噂されている遊郭街へと足を運んでいました。
ろいは男ですが、服を女物にし、少し化粧をしただけで随分可愛らしい女子(おなご)となるのです。
噂の事件の被害者は全員女…ということから、ろいは女装をし、かつ金の髪をもつ噂の加害者を探しました。
少しして、らちがないと感じたろいは、軽く印を唱え、兄弟の式神を喚びました。
「えど、ある。すまないが妖かしを探してくれ。」
「珍しいな、お前が仕事するなんて。」
「兄さん…ご主人様に失礼だよ!!えぇ~っと、どんな妖かしですか、ご主人様。」
特徴を伝えたいにも、情報は金の髪をもつ青年…だけである。他にないか…と考え、ろいはふと思い付いた。
「今この辺りにいる一番強い妖気をもつ金の髪をした妖怪を見つけてくれ。」
「「了解っ!!」」
一言告げて、式神兄弟は飛んでいったのでした。
人間を騙せるくらいに化けることが出来る程の妖怪は数少ない。すなわち力のある妖怪だとわかったろいは、神経を集中させ、妖気を読み取るのに専念しました。
暫くして、式神兄弟がろいのところへ念を送ってきました。
(旦那、多分見つけたぜ~。)
(僕も確かだと思います。東の方の、りざさんのお店の近くです。)
「…わかった。すぐ向かう。」
普通、妖かしは妖気を隠して人の世界へ出てくるのですが、どうやら噂の妖かしはそのような小細工をしないようです。
ろいは不思議に思いながらも、札などの準備を確認しながら式神兄弟の元へと向かいました。
ところ変わり、はぼっくは先程式神兄弟が示した場所の甘味所で座って、辺りを見ていました。
(式神が近くに2匹もいるな…。そろそろ飼い主が来るかな。)
争いを人の街でするのは好ましくないと思ったはぼっくは、ゆるりと立ち上がりました。
「お姉さ~ん。お勘定、ここに置いてくぜ~。またあんたに会いに行くよっ。」
そう言われた娘は顔を赤くしながらこくこくと頷いていました。
(また…俺自身を見ていない輩が一人。)
はぼっくは苦しそうな顔をしながらその場を去り、人気のない広場を目指しました。
はぼっくが去ってすぐ、ろいが式神兄弟のところへ辿りつきました。
「おせぇぞ旦那!!あいつ、移動したぜ!!今あるが追っているからすぐ行くぞ!!」
「ま、待て…えど。私はかなり走って疲れてしまったのだよ…。すまぬがお前の浮遊の力をわ、分けてくれ…。」
「…たくだらしねぇ旦那だなっ。…ほらよっ!!行くぜ旦那!!」ろいはえどの力を借り、急いであるの元へと向かいました。
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