程なくしてあると合流したろいの先には、噂通りの金の髪を持った者が立っていました。
「随分来るのが遅かったんすね、京都一の陰陽師さん。」
そう言って、はぼっくはくるりとろいの方を向きました。
ろいははぼっくの姿を真正面から見て、見惚れてしまいました。
スラリとした背丈に、着流した浴衣、金の髪、空を思わせる蒼い目。
ろいははぼっくの全てに吸い込まれていくようでした。
そこをぐっと堪え、依頼をしなければとろいは自分を叱咤しました。
「最近、夜な夜な京の女子(おなご)たちを襲っているのは、貴様か??」
「襲う…??あんたたちからみたらそうかも知れないが、俺はそんな気は全くないね。むしろ女共が俺に寄って来るんだよ。」
惜しみなく自分のモテる力を理由としてきたはぼっくに、ろいはゲンナリとなりました。
「…襲われた女子に会った。どうやら霊力をかなり奪われていて、数日放心状態にあったようだった。…貴様が霊力を吸ったのか??」
それに対し、はぼっくは怖い顔をしてきました。
「…あんたも俺が加害者だと言うんだな。一応弁解しとくが、あいつらは俺に夜伽を迫ってきて、仕方なく抱いてやった。だがな、あんたはともかく、普通のやつが俺みたいな妖力強いやつの側に長時間いたら、何か起こるに決まってるだろ。…ま、信じてくれないだろうがな。」
そう言って、はぼっくは眉間にシワを寄せ、先程以上に苦しそうな顔をしました。
その様子を見たろいは、はぼっくの異変に気がつきました。
「お前…背中に傷をおっているな。」
「…!!」
「お前が夜な夜な女子を抱いていたのは…彼女たちを襲おうとした…こいつのせいかっ!!!!」
そう言って、ろいは札をあさっての方向に投げました。
しかしそこにはなんと妖怪がいたのです。
「うぅぅ…な、なぜ私がわかった…ろい・増田……。」
「お前が私をつけていたのはだいぶ前から気づいていた。だが、お前から襲われた女子たちの霊力を若干感じ、そこの妖怪の背中からお前の妖気を感じたからな…だいたいの予想が確実となったわけだ。」
理由伝え、「滅っ!!」とろいが叫ぶと、札を貼られた妖怪は消えました。
「あいつ…消したのか…??」
「いや。邪気を払っただけだ。今は京から離れた位置に反省もかねて飛ばしたが…直に京に戻ってくるだろう。…それよりお前の怪我を見せてみろ。」
「ハハハ…俺はあんたの敵の妖怪だぜ??夜な夜な女の霊力を弱らせていた犯人だ。だからあんたが俺を殺せばいい。」
「それは絶対にしないっ!!お前は悪くない!!それにお前、命を粗末にするな!!」
いきなりろいが叫んできて、はぼっくは驚きました。
自分のために本気で叱ってくれる人は、これまでいなかったからです。
「…お前……私がお前に惚れたと言ったら、軽蔑するか…??」
あろうことか、ろいははぼっくに惚れてしまったのです。
「人間で男のお前が、妖怪の俺に惚れただと??」
「そ、そうだ//悪いか!!だからこれからは誰も抱くなよ//女のようにふくよかな部分はないが…わ、私で我慢しろっ!!//」
ろいが顔を真っ赤にしながら告白してきたことに対して、はぼっくは驚きつつも、自分の嘘を見抜いたろいを好いている自分に気がつき、クツクツと笑いました。
「な、何がおかしい//」
「いんや-----。あんた気に入ったぜ。あんたの一生、俺が護ってやるよ。…俺は京都守護妖怪『狐神』の末裔、じゃん・はぼっく。あんたは??」
「私は、京都陰陽師『増田家』15代目当主・ろい増田だ。よろしくな、はぼっく。私をしっかり隣で護ってくれ//」
こうして、京都一の妖怪と、京都一の陰陽師の恋が始まりましたとさ。
めでたしめでたし。
☆後日談
「おまっ、妖怪と付き合うことにしたって…どういう風のふきまわしだよ…。依頼を解決してくれたのは有り難いけどよ…。」
「あんたがひゆうずか。」
ろいのお屋敷から現れたのは、小さな少年に化けたはぼっくでした。
「…おい、ろい。お前ショタだったか??」
「ふ、ふざけるな!!はぼっく、本来の人間に化けた姿を見せてやれ。」
「あいよ、ろい。」
どろんと煙が出て、そこから現れたのは、すらりとした背丈のはぼっく。
「うおっ!?!!でけぇなお前~。というか狐よか犬っころ、って感じだな。」
「貴様、狐神をナメるなよ…未来永劫祟るぞ。」
キャンキャンとひゆうずとはぼっくが言い合っているところを遠くの方から眺めている妖怪もいました。
「…はぼのやつ…人間と仲良くしやがって…。京妖怪が黙ってないぞ…。ま、あいつの妖力に対抗しようと思うやつなんざ、そうそういないだろうが…。」
おしまい……??
[1回]
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