「…ざっと店長の背景はこんなもんだ。そんなわけで、俺たちは、店長のもとに集められたってわけだ。」
ハボックはとにかく驚いていた。
ただのホストのチンピラ程度に思っていた男は、世界的な裏組織によって両親を殺され、その組織を倒すべく立ち上がり、そのためなら自らを犠牲にしても這い上がる精神を持っている。
「…だからあんなに誰かが傷つくのを恐れているのか…。」
「??…まぁ、そうだろうな…。」
「そんでブレさん。今日の会議はなんだったわけ??」
「お前…ほんと軽いな……。ま、そういうところが店長に合っているんだろうけど。…っと…今日の話だったっけか。…そうだな…お前に「依頼」をさせてもらおうかな、『ハボック』。」
「『冷犬』…としてではなく、『ハボック』として…??」
「あぁ、そうだ。お前じゃなきゃダメだ、『ハボック』。」
ハボックはてっきり『冷犬』としての自分に何かを依頼してくるのではないかと思っていたので、きょとんとした顔をして、ブレダを見た。
「お前のその明るくて優しく包み込むようなやつが店長には必要なんだよ…。お前、店長の傍…というか隣にいてやってくれないか…??」
「俺が??なんで。というか俺男だし。」
「…お前無自覚かよ…。リザさんから聞いたぞ。お前、この間店長に「惚れた」だの、「護りたい」だのと言っただろ。」
「うぐっ……。」
「それって、お前、店長のこと、「好き」ってことじゃねーのか??」
まさかこうもたやすく自分の気持ちの答えを導き出されるとは思っていなかったハボックは、これでもかという程に赤面した。
「『冷犬』でもそんな顔するんだな…。というかそんな顔をさせられるのは、店長だけ…ってことなんだろうな…。」
「…くそっ…。あぁそうだよ。俺はあの人に惹かれている。そんなにあの人のこと知っているわけでもないのに、大事にしたいって…直感で思ったんだ。俺、勘は良い方だからな。」
「犬って言われているくらいだからな。」
ハハっと笑い、ブレダは熱燗を飲み干した。
「そうしたら話はやっぱり早いな。今日の会議で話題になったのは、最近歌舞伎町にあらわれた『赤の蛇』っつー組織が次々と若いもんを薬漬けにしているっていううわさが出回っていてな…。その後ろに「ホムンクルス」がいるって情報もあるんだ。そこで店長は自ら青年役になって組織に侵入して調査するんだと…。俺とリザさんは随時情報を店長に流さなかやならねぇから、店長を一人敵陣に送ることになっちまうんだ…。だからハボ、お前に店長を護ってもらいたい。」
「…言われなくともその情報をもらったら俺は店長を護りに行くさ…。『赤い蛇』の場所と建物の地図をくれ。あとは適当に俺は動く。」
こうしてハボックは、店長------ロイ・マスタングへの気持ちをしっかり認識し、彼を護っていくことを再度決心した。
to be continued....
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