あれから2週間。
俺は桐嶋家には行かず、機械の如く次から次へと仕事をこなし、残業も毎日していた。
ひよからは時々メールを貰い、苦手な数学の成績が上がったとか、クリスマスパーティーで、俺が選んだドレスが好評だったとか、サンタさんが可愛い熊のぬいぐるみをくれたなど…写メつきで何度も報告を受けていた。
でも
桐嶋さんからは一切連絡がなかった。
今日は年末締めで、丸川の各部署で忘年会が開かれており、俺も営業の忘年会に参加していた。
この間のタキシードの一件で悩み続けていたのと、やけ仕事の疲れで、簡単にほろ酔い状態になってしまった俺は、早めにふらつく体を叱咤し、会場を後にした。
外に出たら雪が降っており、「あぁ…こんな日に桐嶋さんと過ごしたかったな…」と柄にもなく感傷に浸ってしまった。
そして…気がついたら俺は、涙を流していた。
泣き顔を誰かに見られるのは御免だったので、下を向いて足早になりながら、心の中で「泣き止めよ」と叫んでいた。
すると不意に肩を誰かに捕まれ、後ろに振り向かされた。
「やめてくれま……っ!!き、桐嶋さん?!」
俺の肩を掴んだのは、桐嶋さんだった。
「横澤お前…なんで泣いてる??」
「…こ、これは…。」
「…俺の…せい、かな。ごめん。責任はとるからとりあえず車に乗れ。」
「はぁ…?!ふ、ふざけるな!!というかあんた編集の人と忘年会なんじゃねぇのか?!」
「今日はお前と過ごしたくて断った。」
「あんた…編集長なのに…なんで…。」
「2週間も嫁から連絡がこなきゃ不安でそんな飲み会も行ってられねぇよ。ほら、行くぞ。」
こうして2週間振りに俺は桐嶋さんに会い、桐嶋さんのペースにのせられ、車に押し込まれた。
「どこ行くんだ。」
「内緒。」
「ひよは。」
「今日は俺の親の家。正月のお節料理を習いに行っている。」
そうこうしているうちに車は高速に乗った。
高速に乗って数十分後には高速を下りて、海沿いを走っていた。
雪はどんどん激しくなっていく。
「なぁ…ほんとにどこに行くんだよ。」
「内緒。…それより、責任とる前に俺を避けた理由を教えてくれない??」
「そ、それは…。」
俺が言おうか迷っていると、促すように、桐嶋さんが俺の手を静かに握る。
「……っ//」
「言って、横澤。」
「……あ、あんた…け、結婚するんだろ…。」
「はぁ??」
「……!!!だからっ!!あんたは俺じゃない人と幸せに暮らすんだろ…!!タキシードなんか用意して…俺がいるときにわざわざ見せ付けるようにひよに取りに行かせなくても…こっちから別れてやるよ!!!!」
言うだけ言った俺は、赤信号で車が止まっていることを利用して、何も持たずにさっと車から出て走っていた。
…遠くで桐嶋さんが俺の名前を呼んでいるのが聞こえた。
[11回]
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