気がついたら俺は覚えのない部屋のソファーに座っていた。
ぼんやり辺りを見回しても、何一つ知っているものはなく、少し焦りはじめた。
とりあえず辺りを歩こうと足元を見て驚いた。
「なっ…!!た、タキシード?!!」
そこに誰かが部屋に入ってきた。
「お、起きたか。」
入ってきたのは、タキシード姿の桐嶋さんだった。
「…お前、俺の話をちゃんと聞けよ。…俺がひよにタキシードを引き取って来るよう頼んだのは、……横澤、お前と今から挙式をあげるためだ。…同じタキシードなら、わかりやすく死んじまった嫁に報告出来るだろうし…な。」
(俺と……し、式を挙げるためっ…!!)
桐嶋さんの迷いなき鋭い目つきで告白をされた俺は、状況処理で頭がいっぱいだった。
少し冷静になってきて、疑問に思ったことを桐嶋さんに聞いてみた。
「俺の服のサイズ…よくわかったな……。」
「嫁のサイズなんて、何度も抱いていたら間違えるわけがない。」
「……ばっ、馬鹿野郎っ//」
「…っていうのは半分嘘だが、お前とこの間服を買いに行った時にサイズを店員と話していたのを軽く聞いていたからな。…ちょうど合って良かった。…似合ってるぞ。」
「……それ以上恥ずかしいこと言ったら殺すぞ!!」
「お前ホント可愛い。」
タキシードの真相を知って、俺は、いつものように桐嶋さんと口喧嘩をしてしまっていた。
…多分ほっとしたんだと思う。
桐嶋さんは、俺のことを本当に愛してくれているんだってわかったから。
「さぁて…話はこの辺にして、式あげに行くぞ。」
「うわっ!!お、おい、やめろっ!!」
桐嶋さんは、「どっこらせ」と言いながら、俺を姫抱きした。
俺は憤死してしまいそうなくらいに赤面し、降りようとしたが、桐嶋さんががっちりホールドしていて、危ないので仕方なくそのまま桐嶋さんに運ばれることとなった。
[9回]
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