桐嶋さんが向かった先は、海辺の小さな教会だった。
「2人しかいねぇけど…ごめんな。でもここ、俺が前に式を挙げたところなんだ。」
「いや…。ここ、すごく綺麗なところだな。」
つい本心をぽろりと言ってしまった。しかし時すでに遅し。ゆっくり桐嶋さんの方を見ると、桐嶋さんはいつも以上にとろけるような笑顔を見せてくれた。
「お前が気に入ってくれて嬉しいよ、横澤。」
ゆっくり二人で教卓の近くへと歩む。
まるで、願いを叶えるために一歩一歩、踏みしめながら進むように……。
「横澤、これつけて。」
「なっ…これ、ベール……!!」
「お願い。」
「ちっ……//し、仕方ねぇな……//」
この際、どっちが女役なのかとか…そういうのはどうでも良かった。ただ、この神聖な場所で結んではいけない契りを交わして良いのか…俺はとても不安になっていた。
それを察知してしまうのが桐嶋さんなんだ……。
「横澤、俺に任せろ。大丈夫だから。」
「あ、あぁ……。」
「すぅ……っ」と桐嶋さんが深呼吸をしたので、俺も小さく深呼吸をした。
桐嶋さんが、俺にかぶせたベールをめくり、やっと視界が晴れたと思ったら、極上の微笑みをかましている桐嶋さんが目の前にいたので、俺はとっさに顔を背けてしまった。
そして、誓いの言葉が始まった。
「…汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを…誓いますか???」
桐嶋さんが、俺をまっすぐ見つめながら問うてきた。俺もまっすぐ桐嶋さんを見て答えることにした。
「……はい、誓います。」
今度は俺の番だった。
顔がやけにアツかったが、どうでも良い。とにかく桐嶋さんからほしい一言をもらうべく、俺も同じ言葉を繰り返した。
「…汝、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「当たり前だ。お前の全て、請け負ってやる。」
それを言い終わった瞬間、桐嶋さんが俺を抱き寄せ、口づけをしてきた。
[6回]
PR
COMMENT