三蔵の住むタワーマンションの屋上は、他の部屋と違った造りをしており、玄関は1つだが、リビングの先には4つの扉があり、個別にしっかり分かれた部屋があった。
「す、すげぇ…ひろっ!!」
「今日からここがお前の家であり、ここがお前の部屋だ。…寂しかったらいつでも俺の部屋に来い。」
悟空は三蔵の言葉をそっちのけで、辺りを何度も見渡していた。
今まで自室さえ与えられず、誰かと生活するということもなかった--------親戚宅で住んでいたが、悟空はいない者として扱われていた--------ので、悟空は嬉しくてたまらなかった。
それを表現しようと、悟空は力一杯三蔵に抱き着いた。
「ほんとに…俺なんかと一緒にいてくれて有難う…!!」
「…俺はお前だけだ。お前さえいてくれればそれでいいんだ…悟空。」
そう言って、三蔵もまた、悟空を強く抱きしめた。
「あと二部屋は誰か住んでるの??…その、俺達の御先祖に関係する人…とか??」
「二部屋ともそうなる予定だ。…今は片方しか埋まっていない。」
そう三蔵が話したと同時に、玄関が開く音がした。
「三蔵~??誰かお客~??…ってガキ?!………んん??金目…!!お前、『悟空』か?!!」
現れたのは、ロン毛ですらっとした背丈に、派手な赤いシャツとパンツスーツを来た青年だった。
悟空ははじめ、彼のことを三蔵の女かと思い、無意識に彼に対して敵対の体制をとった。
それを赤髪の青年はすぐに気づき、悟空の誤解を解くべく、自ら自己紹介をした。
「そんなに警戒するなよ…。俺は沙悟浄。お前と同じ、三蔵一行の末裔なんだよ。…それと、三蔵(こいつ)とは何にもないから安心しろ。」
軽く自己紹介を終えた悟浄は、スタスタとキッチンへと向かった。
「あ、あの…その…よろしくお願いします、悟、悟浄さん。」
「呼び捨てで構わねぇよ。その方が違和感ねぇしな。…三蔵、もう手懐けてるんだな。さーすがは「元」保護者サマだこと。」
「うるせぇ、クソ河童。…お前こそ「奥さん」は見つかったのかよ。」
二人の掛け合いをぼぅっと眺めつつ、悟空は、自分の先祖も彼らの中に入って和気藹々としていたかと思うと、自然と頬が緩み、悟空に久々の真の笑顔が戻った。
「おっ、お猿ちゃん笑ったぜー保護者サマ♪」
「あっ…ごめんなさい…。そ、その、ご先祖様も、三蔵や悟浄たちと笑って生活していたのかな…って思ったら、嬉しくて…つい。」
「…これからお前もそうなっていけば良い。俺が絶対お前の笑顔を護ってやるから。」
「おぉーおぉー。今回の転生のお二人はほんんとラブラブだこと。」
「積み重ねた愛があるからな。」
「ちょ!!さ、三蔵……///」
悟浄が帰宅して落ち着いたところで、悟空は、悟浄からも先祖のことについて色々聞いた。
「つまり…悟浄と三蔵は、人間の血が半分以上混ざっているから、記憶が代々受け継がれている…ってことだな。」
「そう。そんで、お前と八戒は完全なる妖怪だから、記憶が残らないようになっているんだ。」
「ってことは、八戒も悟浄の使い魔になるために契約が必要なの??」
「契約のことも知っているのか…。そう、そのとーり。俺が八戒を見つけて、使い魔として契約して、あいつの力を呼び戻さないといけないわけ。」
「だからこいつに八戒を探させているのだが……。」
そう言って、三蔵は悟浄をギロっと睨んだ。
「ちゃーんと見つけてあるって!!居場所は突き止めてあるんだよ…。でも…なんていうか…その…接触できないんだ……。」
「俺の店でNo.1を取っているお前が…か。聞いて飽きれるな。時間がないんだ。とっとと捕まえてこい。」
「へいへい…。」
このとき、悟浄は、自分の想い人------猪八戒を、三蔵たちのもとへ連れてくる自信が全くなかったのだった-------。
to be continued...
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