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カミサマのイタズラも乗り越えて(純情ミステイク)

今回は真面目にミステイク組を書いてみました。
井坂さん視点です。
ではどうぞー。




…あれは5年くらい前。
俺が管理職にようやく配属された頃のハナシ。








「今日から常務になりました、井坂龍一郎でーす。よろしくお願いします~。」
俺はようやく朝比奈の待つ管理職にまで上がってきた。
ここまで上がれば、秘書も誰かしらつく。俺は朝比奈をようやく四六時中傍に置ける…と期待していた。

だがしかし、カミサマはトンだ意地悪をするわけで。

「井坂君。今日から君につく秘書はこの栗山薫(くりやまかおる)君だ。彼はとても優秀だから安心だろう。」

同じ「薫」でも薫違い。
俺は頭が真っ白になった。





「…本日の予定は、以上です、常務。」

元々、俺は一人で何でも出来てしまうので、秘書なんてものも必要はない。
…朝比奈の隣にいる時以外は。

あれから、時々会議等で朝比奈を見かけてはいたが、会話することもなかった。
そういえば、俺が昇進して以来、お互いの家に行くこともしていなかった。

それ程、俺の秘書が朝比奈でないことがショックだったんだ。


全く秘書のやつと会話はせず、いつものように仕事を終え、帰ろうとしたら、急に雨が降ってきた。
…あの日と同じくらい土砂降りの雨だ。

「常務、傘-------!!」
「いらねぇ。家近いから。お前も早く帰れよ。」
ちょうどいい雨だから、頭を冷やして帰りたかった俺は、傘を差さずに丸川を後にした。

雨なら俺の涙も隠してくれる。
俺は静かに涙を流しながら、帰路についた。




…気がついたら見知らぬバーにいた俺は、驚いて飛び起きた。

「お目覚めですか??龍一郎様??」
「あ…さ、ひな…??」
隣に座っていたのは俺が求めていたヒト。

「…あまりあなたの我が儘で秘書を困らせないであげてください。傘を持たずに退社されたと、栗山が困っていました。」
朝比奈は眉間にシワを寄せながら俺に説教し始めた。

「…ふん、知るかそんなもん。俺はあんな秘書がいなくたって一人でこなせる。(クズッ)」
「…少し鼻声でいらっしゃいますね…。体を温めなくては…。」
「うるせぇ!!触るな!!」

朝比奈がいつものように接してくるので、俺だけ傍にいられない寂しさを感じていたのか…と思った俺は、とうとう怒りを爆発させてしまった。

「だいたい、上で待ってるって言ったのはどこのどいつだよ!!俺はその言葉を信じて死に物狂いではい上がったのに…お前は未だ親父の秘書で俺の隣には立っちゃくれない!!…俺はまだ足りないのか…??まだお前に辿り着けないのか…朝比奈っ!!」
思いの全てを吐き出した俺は、言い終わったと同時に泣き崩れた。
大人の…しかも三十路の男が情けない…と頭の隅で思いつつも、この時の俺はただ泣き続けるしか出来なかった。

「…龍一郎様。お顔を上げてください。」
そういって朝比奈は俺を抱えて死角になるところへと運び、着いた途端にきつく抱きしめて静かに叫んだ。

「また…私はあなたを苦しめてしまったのですね…。どうかお許しください。…でも、それでも私はあなたを離したくはありません。こんな我が儘な私を、許していただけますか…龍一郎様。」
朝比奈は俺以上に苦しそうな顔をして謝ってきた。

「それに龍一郎様。言い訳がましいことを申し上げますが、私もあなたがすぐ傍にいらっしゃるのに、隣に立つことが出来ないのは、とても苦しく、辛いのです。…あなたが思っていることを、私も同じように思っているのです。」

そこまで朝比奈は言うと、俺に優しくキスをした。
朝比奈は何度も啄むようなキスをして、俺を慰めているようだった。

「あ、さひ、なっ。」
「はい、龍一郎様。」
「…なんとかして俺の秘書になりやがれっ。…俺はもう我慢できねぇ。」
「かしこまりました。あなたのお傍にいるためなら。」

その言葉を聞いた俺は、満足したように、朝比奈の腕の中で眠ってしまったのだった。










次の日、目が覚めた俺は自分の部屋のベッドの上にいた。
------朝比奈が夜運んでくれたのかと思うと、嬉しい半面、起きた時に傍にいてくれなくて寂しくも感じた。
二日酔いの頭痛がしないのは、朝比奈が俺と同じ気持ちだってわかったからだと思う。


いつものように出社した俺を待っていたのは--------
「おはようございます、…龍一郎様。」

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