夜も深まってきた頃、俺はこっそり八戒の店を張っていた。ふとそこへ、八戒の働く本屋に、酔っ払いが入ってきた。
「なぁ…そこの兄ちゃん……結構きれーな顔してるじゃねぇか…。どうだ??金弾むから一発俺の相手しない??」
「…お客様、ここはそういうお店ではなくて普通の本屋です。特に本をお探しでないのなら、すみませんが……んんっ??!!」
八戒が丁寧に酔っ払いを追い出そうとしているとき、その酔っ払いはこともあろうに、八戒にキスしやがった。
八戒はその酔っ払いから離れようと体をジタバタさせていたが、なかなか離れられない様子だった。
その様子を見ていた俺は、頭の何かがブチっとキレた。
「おいお前……俺の八戒に手ぇ出すんじゃねぇぞ……!!」
俺はドスを聞かせた低い声を酔っ払いに言い、力任せに八戒からその酔っ払いを引き離した。
「おい兄ちゃん!!邪魔すんじゃねぇよ~!!そこのきれーな兄ちゃんは俺が貰うんだよー!!」
「あ い に くだがな、お前がキスしやがったコイツは、俺の も の な の。汚ねぇ手で触るんじゃねぇ!!」
「んじゃ証拠見せろよお前~。」
酔っ払いのくせに、このオヤジは俺に向かって、八戒とそういう仲だっていうのを証明しろと言ってきた。
くるりと八戒の方を見ると、かなり動揺しきっている様子で、顔も青くなっていた。
「違うんなら連れて行くからな~きれーな兄ちゃん~。」
酔っ払いは本当に八戒をお持ち帰りする気満々だ。
俺はなんとしてでも阻止したかったのだが、八戒の気持ちが伴わないまま、キスとか、そういうのはしたくなかった。だからじっくり八戒を崩していこうとしていたのに、ここでいきなりピンチな状況。
とりあえず八戒に声をかけてみようか…と思い、八戒に近づく。
すると八戒は俺に抱き着いてきた。
「は、八戒……??」
「悟、悟浄さん……悟、悟浄さん…ぼ、僕……!!」
「……」
八戒は何とか何かを俺に伝えようとしていたので、とりあえずは黙って八戒を抱きしめた。
「ご、ごめんなさい……。」
「なんで謝るの??」
「…こんな状況でないとこんなことを言えない僕を許してください……。そ、その…僕、悟、悟浄さんと初めて会ったとき…その、ひ、一目惚れしちゃって…。で、でも、僕男で……気持ち悪いと思われると思ったんです。でも、悟浄さんはしょっちゅう僕のことがす、好きだと言ってくれて…本当に嬉しかったんです。で、でも、僕個人のプライドがどうしても崩せなくて…ずっとあなたの言葉を跳ね返してきました。それでもさっき、あなたは僕を助けてくれた……。だから僕、あなたのこと…信じたいです。あなたのその気持ちを…信じたいです。」
八戒は綺麗なグリーンの目から涙を流しながら、俺に愛の告白をしてくれた。
嬉しくてすぐさま押し倒して襲いたい衝動をぐっとこらえて、俺はしっかり返事をすることにした。
「有難う、八戒。俺まじ今ちょー幸せ。お前をすぐ食いたいところだけど、まずはそこのオヤジに俺らの愛を示そうか。さっきのふざけたキスをしっかり塗りつぶしてやる。」
そう言って、俺は八戒に優しくキスをした。
数日後、八戒を三蔵に会わせたところ、やはり先祖「猪八戒」の子孫であることがわかり、俺は先日八戒とキスをして使い魔の契約もしたので、一石二鳥、一件落着となった。
そんなわけで、八戒を三蔵の家に住ませることになったので、俺は今八戒の家にいる。
「そんじゃ八戒、俺明日お前ん家行くからな。荷物まとめとけよ~。」
「はい。……あ、あの、悟浄さん。」
「悟浄でいいよ、八戒。」
「はい…では悟浄。…その……。」
そう言って、なぜか口ごもる八戒。無意識なのか、唇を舌で舐めている。その様子がとてもエロくて、俺は無性にキスをしたくなった。
「……なんだ、キスしてほしいなら言えよ~。俺いつでもどこでもしちゃうぜー♪(ちゅっ)」
「…//あ、有難うございます……//ではまた明日…!!」
(ま、まじか!!キスしたかったのか!!いやー両想いサイコー♪)
(あーなんで悟浄わかったんだろう…ま、いいか。伝わったのなら。)
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