いつものように、俺は横澤とひよと夕飯を食べて
ひよが寝床に行き
横澤と晩酌を楽しんでいた。
俺も横澤も、酒はだいぶ強い方だから、いつものペースで缶を開けていった。
…ただひとつ、横澤が俺と目線を全く合わせないのだけがいつもと違っていた。
「それで、ひよが今度ビーズアクセサリを作ってみたいって…、桐嶋さんあんた人の話聞いてるのか??」
「…お前、俺に何か隠し事してないか。」
静かに問うてみたが、横澤はビクっとして顔ごと俺の方を向かなくなった。
「べ、別に何も隠してねぇよ…。」
丸川の暴れ熊と恐れられている目の前の男が、こんなに自信なさ気に発言するときがあると誰が知っていようか、いや、俺以外誰も知らないだろう。
「嫁に隠し事をさせる程、俺にはまだお前への愛が足りないのかな…すまない。」
ちょっと悲しい顔をして、横澤の出方を伺ってみる。
案の定、横澤は横目で俺の表情を盗み見て、眉間にシワを増やしながらも、気まずそうな顔をしている。
「あんたからは…、あ、愛情は溢れる程貰っているから…その、心配するな。」
しどろもどろになりながらも、不安を取り除こうと必死な横澤。可愛くて仕方がない。
「じゃあ何で俺と目を合わせない??」
最初の問題に戻ったら、横澤はあーうーと唸りだした。しかし、少しして意を決したのか、顔を真っ赤にしながらも俺をちゃんと真っ直ぐ見つめてくれた。
「その…、ひよにも桐嶋さんにも俺は大事にしてもらってるんだなと今日営業先の人との家族についての世間話の流れでふと思ったんだ…。
だから、たまにはちゃんと感謝をこめて何かしてやりたいと思って…ひよにはビーズアクセサリのキットを買ってきたんだが、桐嶋さんにはまだ何も用意出来なくて…。
そもそも俺は、桐嶋さんの好みすらわかってないから…何をしたらいいか、わからないし…。でも桐嶋さんは俺のこと…その、ちゃんとわかってくれているのに…何だか俺だけダメダメだなって。」
話ながら段々しょげた雰囲気になっていった横澤を見ていて、心底嬉しくて、横澤が可愛すぎて、今すぐ襲いたくなったが、ぐっと堪えて話を聞いた。
横澤の場合、思い悩む体質だから、吐き出せるときに吐き出させないと、変な方向に思考がいくからな。
「そんなことはない。お前は俺好みのやつだし、好きな味つけを知ってるし、俺の好きな可愛らしいお前を見せてくれるし。」
「こんな熊みたいなやつ、可愛くなんかねぇよ…。」
「いや可愛いな。」
「いっぺんしんでこい…//」
照れているが、先ほどまでのしょげてる雰囲気からは脱した横澤の様子にほっとした。
…まぁでも、たまにはおねだりしてみようか。
「そうだな…強いていえば、今お前から欲しいものがあるな。」
「何だ…??」
少しだけ目を輝かせて、俺の次の言葉を待つ横澤。
…可愛すぎて我慢の限界が近づく。
「俺に愛され続けることの誓い。」
「なっ…!!」
「駄目…か??…まぁお前が俺以外に好きなやつが出来たら…「わかった…。」へっ??」
「い、一度しか言わないからよく聞けよ!!……俺はっ。嫉妬深いし、偏屈だし重いやつだ。だけど、あんた以外大事に想うやつはいない。…桐嶋さん。あんたが俺を愛してくれるなら、俺はあんたが愛してくれている間、ずっと俺も…桐嶋さんを…す、好きでいてやるよ。」
この、世界一可愛い、世界一愛している嫁に、永遠の愛を受け取ると誓ってもらえて、俺は世界一幸せ者だな。
[23回]
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