時々、夢を見る。
そしてそれは、いつも悟空が泣き叫んでいる夢。
しかも悟空が泣き叫びながら呼ぶ名は…俺の名ではない…と思う。
そもそも夢が無声映画のようなのだ。
ただただ、場面場面が流れていくようだった。
そんな中で俺は、「俺ならお前を泣かせたりしない」「そんな顔はさせない」…と思いつつも、
「お前が泣き叫ぶ程求めるそいつは俺より大切か」
「お前はそいつのこと……好きなのか」
と不安がっていた。
あるとき、悟空がそわそわしながら俺に近づいてきた。
「三蔵…。最近、よく眠れてる??」
「…あぁ、問題ないが。」
その返答に満足出来なかったのか、悟空は頬を膨らませて怒っているそぶりを見せた。
俺はそれに気づかないふりをして、読んできた新聞に目を戻したのだが、悟空はその態度に対してもご立腹だったらしく、新聞を俺から取り上げて、俺の目線に合わせてしゃがんだ。
「嘘つき。三蔵、最近寝てるときうなされているの、俺知ってるんだからな!!…その…俺がそ、添い寝とかすればよく眠れるだろうから……お、俺、添い寝してやっても良いよ…?!」
こいつは俺の気も知らずに、そんな爆弾を投げ込んできた。
でも嬉しかった。
俺のことを気遣ってくれるこいつ…悟空の優しさが、俺の不安をきれいに少しずつ拭い去ってくれた。
「…ふん、男に二言はないぞ、悟空。」
「…おう!!ま、任せとけ!!」
「好きな奴と共に寝るってことは…どういう意味かわかっている…というわけだな。」
「へっ…??うわっ!!…三蔵!!まだ昼間だっつーの!!てか重いからやーめーろーっ!!」
夢の中での悟空は夢でしかない。
俺は「今」俺を見ている悟空さえいてくれれば、それで良い。
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