もし私が
もし俺が
たったひとつだけ大事なものを護れるのなら………
「お前だ」と
「あんたです」って
言ってやりたいんだ………
If I wish to protect the “one”, that is “YOU”
------- I swear by God.
私の名は「ロイ・マスタング」。
アメストリス国軍・中央指令部にて、大佐職を担っている。
私がひとつだけ護れるとしたら、護りたいと思っていたやつが一人「いた」。
彼の名は「マース・ヒューズ」。
私と同じときに軍の兵役学校で勉学を学び、イシュバール殲滅戦に出向いた軍人。
そして
私が唯一愛した「男」。
彼には家族がいたのだが、まだ私が東方司令部にいたこ頃は、毎度おかしな理由をつけては私の様子を見に来て、私を壊れ物のように大切に扱い、抱きしめ、ひとつとなってくれていた。
家族もいるヒューズが、なぜそこまで私を大事にしてくれるのか、不思議でたまらなかったので、一度だけ、理由を聞いたことがあった。
『なぜって…そらぁ、お前だからだよ、ロイ。俺が家族を護らなきゃならないのは当然だし…むしろ「義務」だけどよ。お前は違う。魂の一欠片まで、お前を護りたいと…そう思ったから、お前は「義務」でなく、「俺の意思」で護り続ける唯一の人間なんだよ。』
その言葉を聞いて、私は嬉しい反面、結局は「義務」には敵わないのだろうな…と悔やんでいた。
それでも愛してもらえたことが嬉しかったし、その愛を信じていた。
しかし
神…というものを信じてはいないが、もしいるのであれば、神は私に残酷な罰を与えた。
…そう。私の唯一愛するヒューズを奪っていったのだ。
私は、彼の最期の言葉すら聞くことも出来なかった。
私は確かに、イシュバールで罪のない人間をたくさん殺してきた。その罰は、いつか自分に下るのだろう…と思っていたし、それは自分の命と引き換えに償うべきだとも思っていた。
だが、神は…それだけでは足りないという意思を示した。
私の愛する人間をも奪わないと許せないと…そのような意思を示したのだった。
私は荒れに荒れた。
仕事に関しては、そつなくこなしていたが、プライベートな面で、とても荒れた。
仕事が早く終わったときは常に飲みに出かけ、声をかけられた、あるいはかけたその場限りの連れを作っては身体の関係を築き…というのを繰り返していた。
私はその行為を繰り返すたび、「愛」だの、「誰かと生きる」だのという気持ちを忘れていった。
自分を心から愛し続けてくれる人は、もうどこにもいないのだと…そう思っていた。
しかし
神は、私にチャンスをくれたのだ-------------。
to be continued...
[2回]
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