「久保ちゃん、危ない-------っ!!」
そのとき、何かが壊れていく音が鳴り響いた。
その音が鳴り響く1時間前。
久保田と時任はW.A.に関する事件を、いつもの如く探っていた。
「今日も収穫なし…かぁ。」
「そう焦っても、ホシは出てこないよ、時任。」
「わぁーってるって、久保ちゃん…。だぁーくそ!!腹減った!!」
「そんじゃあそこのファミレスにでも寄るか。新メニュー出たみたいだし。」
「久保ちゃんって、ほんと新しいもの好きだよなー。」
いつものたわいない会話をしながら、今日1日朝から何も食べていなかった久保田と時任は、近くのファミレスへと足を運んだ。
-----ここで「音」の発端が起こることも露知らず。
「だぁー食った食った!!ここのデミソースハンバーグ、まじうめぇよなー!!」
「今回の新メニューも当たりだったなー。美味しかったね、時任。」
食後のたわいもない会話。
時任があーだこーだ言っているのを、幸せそうに頷きながら聞いている久保田。
…彼らは時の流れで、自然と好きあう仲となっていた。
「時任、パフェのクリームついてるよ。」
「お、さんきゅ。…って、久保ちゃん…舐めるなよ…。恥ずかしいだろ…。」
「俺はそのパフェ食べてなかったから、これで味見。…うーん、甘い。」
「そんなちょっとじゃあ、味、わからないだろ…//」
「わかるよ。少なくとも時任の味…はね。」
お互い幸せそうな顔をしながら話していると、突然店内で銃声が鳴り響いた。
「ここの店内にいる人全員、今から人質となってもらう!!動いたら撃ち殺す!!」
店内は一転して騒然となり、机の下でガタガタと震える者、客同士で寄り添い、震える者が多数いる中で、平然と食事を続けようとしている一組の客がいた。
「すいませーん、このパフェ2つ追加お願いしまーす。」
一斉に、人質の客がその一組の客------久保田と時任を見た。
「あら、俺たち人気者??」
「おいてめぇら…話聞いてたか…!!黙ってじっとしてろって言ってんだよ!!!!」
そう言って、犯人は時任に向かって刃物を向けて走ってきたのだ。
それをうまくよけようと態勢を整えた時任であったが、たまたま近くにあったモップで足を滑らせてしまい、避けきれない態勢になってしまったのだ。
それを瞬時に読み取った久保田が、時任をかばうように犯人の前に立ちふさがる。
「久保ちゃん、危ない--------!!!!!」
グサリ、と音を立てて、久保田の脇腹にナイフは刺さった。
それを見た犯人は怖がって後ずさりをして、しり込みした。
「お、おい…じ、自分から刺さりに来るやつがいるかよ…!!」
ほどなくして警察が入っていたので、あっけなく犯人が捕まったはいいが、それを時任が見入っていた隙に、久保田がどこかへ行ってしまった。
「あれ?!!久保ちゃん!!!!」
焦った時任は、久保田を探すため、店を勢いよく飛び出て、久保田を探す。
ふと足元を見ると、血の斑点が道路に伸びていた。
それを追っていくと、時任は、高架下の柱を背に座って、煙草をふかしている久保田を見つけた。
「久保ちゃん!!!!!」
「あー時任、ごめんね、置いて行って。警察に捕まっちゃうと色々面倒だから、逃げたかったんだ。」
いつものような口調でへらりと笑う久保田に、時任はいらついていた。
「タバコなんか吸ってる場合かよ!!久保ちゃん、刺されたんだぞ…?!」
「あーうん、ソウネ。」
「…っ(ぐすっ)頼むから……自分の体…大切にしてくれよ…」
時任は、久保田が自分の体を大事にしないところが嫌だった。
いつだって、自分のために怪我をする久保田が嫌だった。
確かに、時任は「久保ちゃんのものは俺のもの」発言を過去にしたが、何も命まで差し出せとは言っていない。
対等に生きていくためなら、お互いの大事は同じものでありたい------
そう時任は願ってこその発言だった。
「時任。」
ふと、久保田は立ち上がって、時任の前に立った。
「ごめんね??」
「…謝るんだったら、最初からそういうことはするなっての。」
「そんじゃ仲直りの印、ね。」
それが合図となり、久保田と時任は、同時にお互いをきつく抱きしめ、「生」を分かち合ったのだった。
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